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妄想彼女日記 辻みいな ライブハウススタッフ 2026

妄想彼女日記|辻みいながライブハウススタッフの彼女だったら

編集部

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辻みいな

辻みいな

ライブハウススタッフ

推しの卒業が発表された夜、それでも彼女は対バンの現場を回しきった——付き合って五ヶ月、初めて見る涙の話

絵文字のないメッセージが来たのは、夕方の五時四十分だった。

西日で部屋がいちばん暑くなる時間で、エアコンの温度を一度下げた直後だった。ローテーブルの上でスマホが振動して、画面に彼女の名前が出た。

「今日、終わり待っててもらったりできる…?」

画面を二度読んだ。彼女の文面はいつも絵文字とスタンプで飾り立てられていて、文字だけの行が来たことは、付き合って五ヶ月で一度もなかった。今日は対バンが四組入っている日で、彼女は昼から現場に入っている。終演は九時半、バラシが終わるのは十一時前後。それも全部、彼女のこれまでの発信で覚えた時間割だった。

「待ってる。何かあった?」

返事はすぐに来た。

「あとで話す。ごめん、転換入る」

ごめん、が引っかかった。何も謝られるようなことはまだ起きていない。起きていないのに謝る時の彼女は、自分の何かを持て余している時だと、五ヶ月ぶんの経験が言っていた。

五ヶ月の間、彼女はいつも喋る側で、僕は聞く側だった。昨日の対バンの客入り、転換で巻いた時間、物販で完売したバンドのタオル。現場の話をする時の彼女は早口で、話の三割は専門用語で、僕はその用語を少しずつ覚えることで彼女の一日を再生できるようになった。待つのは慣れている。ただ、向こうから「待っていて」と頼まれたのは、今日が初めてだった。

理由は、電車の中で分かった。


駅のホームで、SNSが騒がしくなっていた。

トレンドの一番上に、彼女の推しの名前が上がっていた。アイドルグループの公式アカウントが、夕方五時半に発表を出していた。メンバー一名、年内でのグループ卒業。丁寧な長文の画像と、本人の手書きのコメント。

彼女がそのグループを追いかけて何年になるのか、正確には知らない。ただ、部屋の棚一段がまるごとそのグループのグッズで埋まっていることと、ペンライトに推しの色のフィルムが三本ぶん常備されていることと、遠征の翌朝はいつも声が半分枯れていることは知っている。五時四十分の文字だけのメッセージは、発表の十分後だった。

電車に揺られながら、手書きコメントの画像を最後まで読んだ。ファンへの感謝と、次の道の話。丸みのある字で、推敲の跡が見えないくらい整っていた。きれいな発表だった。きれいな発表であることと、それを受け止められることは、別の話だった。

トレンドの中身も少しだけ見た。感謝を長文で綴る人、実感がないと繰り返す人、発表の一時間前に呑気な飯の写真を上げてしまったことを悔やむ人。何万人かの夜が、同じ十分間で折れ曲がっていた。その中の一人が、いま地下でマイクスタンドの高さを直している。

ライブハウスは、駅から徒歩六分の雑居ビルの地下にあった。階段の入口に今日の対バンの看板が出ていて、四組のバンドのロゴが縦に並んでいる。看板の脇には手書きのボードが立てかけてあり、開場と開演の時刻、それにドリンク代の案内。階段を降りるほどに空気が冷えて、地下から、ベースの低音が地面越しに靴の裏へ届いた。二番手のバンドの最中らしい。チケットは昼のうちに彼女が取り置きにしてくれていた。「客として来て。仕事中は構えないけど」といういつもの条件つきで。

受付で名前を言うと、リストの中ほどに彼女の字で僕の名前があった。現場で彼女の字を見るのも、初めてだった。受付脇の壁には過去のイベントのポスターが何層にも重ね貼りされていて、めくれた端から覗く一番下の層は、日に焼けて色がほとんど抜けていた。この壁の厚みのどこかの層から、彼女はここで働いている。

重い防音扉を引くと、音が壁のように押し寄せた。


フロアは八分の入りだった。

夏の対バンのフロアは、冷房と人の熱が拮抗して、場所によって温度が違う。後方の壁際に立って、まずステージではなくドリンクカウンターを見た。彼女はそこにいた。黒いスタッフTシャツに、腰にインカム。ドリンクチケットを受け取って、缶を開けて、カップを差し出す。受け取る手と渡す手の間で、次の客の注文をもう聞いている。列は途切れないのに、手が止まる瞬間がない。カウンターの照明は暗いが、五ヶ月も見ていれば表情の変化くらいは距離があっても分かる。

分からなかった。いつもの営業の顔が、完璧に貼りついていた。

二番手が終わって、転換に入った。フロアの照明が半分戻り、彼女がカウンターを後輩に任せてステージに上がる。ドラムの位置を直し、ケーブルを八の字に巻き取り、床のバミリテープを貼り替える。テープの色はバンドごとに分けてあるらしく、彼女は腰のポーチから迷わず次の色を出した。マイクスタンドの高さを次のボーカルに合わせて調整して、袖のセットリストを差し替える。動きに無駄がない。インカムに指を当てて何かを確認し、照明卓に向かって手で合図を送る。ギターの試し音が二回鳴って、モニターの返しが調整されて、十五分の転換が、十三分で終わった。

一発目の音が出た瞬間、フロアの空気が変わった。前方で拳が上がる。彼女はカウンターに戻る途中で一度だけステージを振り返って、それからまた列に向き合った。あの一瞬の振り返りが仕事なのか癖なのか、僕には判別がつかなかった。

三番手の演奏中、彼女は一度だけスマホを見た。

カウンターの陰で、画面を三秒。それで戻した。灯りに照らされた顔は、また営業の顔だった。ただ、スマホをエプロンのポケットに戻す時、指が一度、ポケットの外から画面を押さえた。仕舞ったものを、布越しにもう一度確認するみたいに。

トリのバンドの時、フロアは今日一番の熱になった。最前列で拳が上がり、後ろでも身体が揺れる。天井の低い箱の中で、キックの音が胸に直接当たる。彼女はカウンターの中から、フロア全体を見ていた。客の一人が転びかけたのを目で追い、通路のドリンクカップを回収し、非常口の前に立った客に小さく声をかけて動いてもらう。曲のクライマックスで客の腕が一斉に上がった瞬間も、彼女の視線は腕の隙間の床を見ていた。音楽を浴びる側と、音楽を支える側。彼女は毎晩、こちら側からあの熱を見ている。

その横顔を見ながら、発表の文面を思い出していた。彼女は今夜、何十回この十分間を再生しただろう。再生しながら缶を開け、レジを打ち、テープを貼り替えた。仕事の速度は、たぶん今夜がいちばん速かった。速くしないと、追いつかれるからだった。

アンコールが終わって、フロアの照明が全部点いた。汗だくの客たちが出口へ流れていく。彼女はカウンターで精算用のドリンクチケットを数え始めていた。目が合った。一瞬だけ、営業じゃない顔が覗いて、すぐ引っ込んだ。口が「まだかかる」と動いた。


バラシは、見ているだけで一時間半かかった。

物販テーブルの撤収を手伝うバンドマンたち。機材を搬入口へ運ぶ列。ドラムのハードケースが階段を上がっていくたび、金属の角がコンクリートに当たる音が響いた。彼女はステージと客席を往復しながら、ケーブルをまとめ、養生テープを剥がし、フロアに落ちたピックと銀テープを拾い集めていた。拾ったピックは無くし物としてカウンターの小箱に入る。取りに戻ってくるバンドマンが、たまにいるらしい。モップがけは後輩の仕事らしく、彼女はその間に照明卓の後ろで今日の数字をまとめている。バンドごとの動員と、ドリンクの杯数と、精算の封筒。挨拶に来た若いバンドのボーカルに、彼女は封筒を渡しながら何かを言って、相手が深く頭を下げた。

外の看板を回収して、階段の電飾が消えて、最後に場内のBGMが止まった。音のなくなったフロアは、天井の低さがむき出しになって、さっきまで熱があった場所には見えなかった。全部の電源が落ちる前に、彼女は懐中電灯を持ってフロアを一周した。忘れ物の折りたたみ傘が一本と、イヤリングが片方。カウンターの小箱に入れて、日付と拾った場所をメモに書き添える。それで、今日の営業が終わった。

「彼氏くん、悪いね。もうちょいで終わるから」

店長らしき人が、通りすがりに声をかけてきた。彼女が僕のことを職場でどう説明しているのか、初めて知った。

十一時十分、彼女はスタッフルームから私服で出てきた。Tシャツにデニム。トートバッグの持ち手を、両手で握っていた。

「おつかれさま」

「……うん。おつかれ」

階段を上がって地上に出ると、八月の夜の空気が、地下の冷房で冷えた肌にまとわりついた。彼女は駅と反対の方向に二歩歩いてから、立ち止まった。

「ごめん、なんか、家まで持つ自信ない」

「うち来る?」

「私の部屋がいい。……ちょっと寄るとこある」

コンビニだった。彼女はかごも持たずに店内を一周して、プリンを二つと、あたたかいお茶を二本、レジに置いた。落ち込んだ日の彼女の定番が、プリンであることは知っていた。いつもの三個パックではなく、カラメルが別添えの、少し高いほうだった。今日は特別枠らしい。二つなのは、僕の分らしかった。


彼女の部屋に入るのは、これで三回目だった。

ワンルームの壁一面に、スチールラックが二本。片方は仕事の道具と服で、もう片方が、あのグループの棚だった。CDが発売形態別に並び、アクリルスタンドが等間隔に立ち、ペンライトが二本、充電スタンドみたいな専用の台に刺さっている。ペンライト用のカラーフィルムは、推しの色だけ予備が三枚、クリアファイルに挟んで立ててあった。棚の下段には遠征のチケット半券を月別に収めたファイルと、丸めた銀テープを保存した空き瓶。棚のいちばん目立つ段は、推しの生写真とアクリルスタンドだけで組まれた一角だった。祭壇、と本人が呼んでいる。過去の二回、この棚の解説だけで一時間ずつ聞いた。

彼女はトートバッグを床に置いて、祭壇の前に立った。しばらく黙って立っていた。

「……発表、見たよね」

「うん。電車で読んだ」

「そっか。じゃあ説明しなくていいか」

彼女はプリンの袋をローテーブルに置いて、床に座った。蓋を剥がして、スプーンを入れて、一口食べて、止まった。

「あのね。泣かないから、安心して」

そう宣言してから、三十秒ももたなかった。

スプーンを持ったまま、彼女は静かに決壊した。声はほとんど出さなかった。肩が小刻みに揺れて、涙がぽたぽたとプリンの容器の縁に落ちた。泣きながら、それでもスプーンは置かなかった。プリンを一口すくって、口に運んで、また泣いた。食べることと泣くことを同時にやる人を、初めて見た。僕は隣に座って、背中に手を置いた。Tシャツ越しの背中は、地下の冷房の名残でまだ少し冷たくて、その温度が今日一日の長さだった。

付き合って五ヶ月、泣き顔を見るのは初めてだった。いつも現場の話を早口でして、笑ってばかりいる人の泣き方が、こんなに静かだとは思っていなかった。

「今日さ、最悪なんだよ」

しゃくり上げる合間に、彼女は言った。

「発表の十分後に転換だったの。泣きそうなまま、マイクスタンドの高さ直してた。お客さんは今日のライブが最高の夜で、それを回すのが私の仕事で、私の推しは今日、卒業を発表してて。……全部ちゃんとやったよ。ドリンクも数え合ったし、転換も巻いたし」

「見てた。完璧だった」

「でしょ。完璧だったんだよ、みいな、今日」

自分の名前を主語にするのは、彼女が自分を励ます時の癖だった。その癖が出た直後に、涙が二倍になった。

それからしばらく、部屋にはエアコンの音と、彼女の呼吸だけがあった。僕はお茶のキャップを開けて、彼女の手の届く場所に置いた。慰めの言葉は探さなかった。探しても、彼女の八年に釣り合う言葉は僕の中にない。代わりに背中に置いた手を動かさずにいた。彼女は途中で一度、祭壇のほうを見ようとして、やめた。見たら終われなくなることを、自分で分かっている顔だった。


泣き止んだのは、日付が変わる頃だった。

彼女はプリンを食べ終えて、二本目のお茶を開けて、祭壇の棚から一枚の生写真を持ってきた。何年か前の、ツアーの物販で引いたやつだと言う。

「この人ね、地元のイベントに来たの。高校の時。福岡の、ショッピングモールの無料ライブ」

彼女の推し語りが始まった。僕は聞く係だった。高校の制服のまま、買い物のついでに足を止めたショッピングモールの吹き抜け。客は二十人くらいで、半分は買い物客の足止まりだった。その真ん中で、当時まだ売れていなかったその人が、フルサイズで三曲歌った。二十人でも、二万人の顔で歌っていた。帰りにCDを一枚買ったら、机の下で手を握られて、三秒だけ目を見て、ありがとうと言われた。それで終わりだった。終わらなかったのは彼女のほうだった。

バイト代が出るたびに現場を積んだこと。夜行バスで往復して、そのまま学校に行った月曜が何度もあったこと。上京を決めた理由の半分は進学で、半分は「東京は現場の数が違う」だったこと。話が進むにつれて、彼女の声から鼻声が抜けていった。過去を語ることが、この人の応急処置になっている。

「ライブハウスの仕事もさ、もとはと言えばそれだよ。この業界にいたら、いつか推しの現場に当たるんじゃないかって、ちょっと期待してて」

洟をすすりながら、彼女は少し笑った。

「不純でしょ。でもね、働き始めたら、ステージの裏側が好きになっちゃった。転換が時間通りに終わって、一発目の音が出て、フロアがわってなる瞬間。あれ、カウンターから見るの、最高なんだよ」

生写真を両手で持ったまま、彼女は棚に目を戻した。

「推しのいない人生って、考えたことなかった。推し活を止められたら、みいなはたぶん壊れるって、ずっと思ってた。……でも卒業って、いなくなるわけじゃないんだよね。グループからいなくなるだけで。次の道も、応援すればいいだけで」

言い聞かせるような言い方だった。言い聞かせていることが、本人にも分かっている言い方だった。彼女は生写真を祭壇の元の位置に、角度まで揃えて戻した。戻した写真の隣で、アクリルスタンドの推しが、小さく手を振る姿勢のまま立っていた。

「年内は、全部の現場に行く。チケット戦争、全勝する」

宣言する声は、まだ半分鼻声だった。


翌朝、目が覚めると、彼女はもう起きていた。

カーテンの隙間から入る光が、床の上に細長く伸びている。彼女はその光の横に座って、ローテーブルにノートを広げていた。冷蔵庫で冷やしたスプーンを二本、目蓋に交互に当てながら。泣いた翌朝の目の腫れの取り方まで、現場で覚えた知恵らしかった。

ノートを覗くと、年内のグループの日程が書き出されていた。ツアーの日程と、彼女のシフトの日程が、二色のペンで並んでいる。ツアーが青、シフトが黒。重なっている日に印がついていて、その横に「交代要相談」と書き込まれていた。字は昨日の受付リストで見たのと同じ、丸くて速い字だった。

「おはよ。……見た? この鬼日程」

振り向いた顔は、目が腫れていた。腫れた目のまま、口はもういつもの彼女だった。

「十一月、三連続で被ってるの。店長に土下座かなあ。あ、でも十一月って対バン企画月間だから、絶対抜けられない週がある。どうしよ。どうしよじゃないんだよなあ」

独り言と相談の中間の速度で喋りながら、彼女はノートに書き込みを続けた。昨日、静かに決壊した人と同じ人だった。同じ人が、一晩で作戦会議を始めている。回復と呼ぶには忙しない。でも彼女の回復は、たぶん昔からこの形なのだろう。落ち込む時間より、次の現場までの日数を数える時間のほうが、この人を立て直す。

朝ごはんは、コンビニのパンを二人で分けた。昨夜プリンと一緒に買っておいたものが、そのまま朝の分になった。彼女は食べながらもノートを閉じなかった。ページの端に、シフト交代を頼む相手の名前が三人分、優先順位つきで書いてある。

「昨日は、ありがと」

パンの最後の一口を飲み込んでから、彼女はテーブルに目を落としたまま言った。

「泣いてるとこ、見せる予定なかったんだけど」

「予定にないほうが、見れてよかった」

「何それ」

笑って、彼女はノートの端を折った。しおり代わりの折り目が、日程のページについた。


昼前に、二人で部屋を出た。

八月の昼の光が、雑居ビルの壁に真っ白に反射していた。彼女は今日も夕方から現場だった。対バン企画の二日目。今日の四組のうち一組は、昨日封筒を渡して頭を下げられた若いバンドの、対バン相手だと言う。駅までの道を、彼女はいつもの速度で歩いた。昨日より半歩ぶん、歩幅が戻っていた。信号待ちで、彼女は日陰を選んで立った。選びながら、口の中で何かの曲を小さくなぞっていた。あのグループの曲かどうかまでは、聞き取れなかった。

駅前は、昼の人波だった。部活帰りの学生と、買い物袋を提げた人たちの間を、彼女は器用に縫って歩く。人の流れを読むのも、たぶん職業技術のうちだった。

改札の前で、彼女はトートバッグから何かを出して、僕に握らせた。ペンライトのフィルムだった。推しの色の、予備の一枚。クリアファイルに三枚挟んであった、あの予備からの一枚だった。

「年内のどれか、一緒に来て。振り方は現場で教える」

それだけ言って、彼女は改札を抜けていった。ホームへ降りる階段の途中で一度だけ振り返って、手を振る。いつもの、指先まで開いた振り方だった。

改札の外で、フィルムを光にかざしてみた。夏の昼の光が、推しの色を通って、手のひらに落ちた。

作品ノート

推しの卒業発表の夜を書いた。推しと切り離されそうになった辻みいなが、どうなるか。実は、それを実験した作品がすでにある。

「美少女ドルオタ辻みいなの『推し活』×『エッチ』W禁欲」。生きがいの推し活と大好きなエッチを一ヶ月まるごと禁止して、密着ドキュメントで記録するという企画だ。本編で彼女が生写真を握って言った「推し活を止められたら、みいなはたぶん壊れる」——あの台詞の答え合わせを、メーカーが一ヶ月かけてやっている。最初は平気そうにしていた彼女の情緒が、日を追うごとにおかしくなっていく——その過程が、一ヶ月の密着ドキュメントとして丸ごと収録されている。

辻みいなは、デビューからずっとアイドルオタク設定で作品を積んでいる人で、それは彼女の実際の趣味が推しのグッズ集めとアイドルライブだからだ。設定と本人の距離が近いから、禁欲が解けた瞬間の爆発にも嘘がない。本編の最後、改札で渡されたペンライトのフィルムの色が気になった人は、サンプル動画で彼女の顔を確認してほしい。一ヶ月分の我慢が解ける直前の、あの目。ライブハウスのカウンターから最高の瞬間を待っていた目と、同じ形をしている。