川越にこ特集|店を開く資金のためにS1へ来た料理人の、2年7か月と138本
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川越にこ
- デビュー年
- 2024年
- 出演作品数
- 138本以上
白いコックコートで、皿を2枚差し出している
白いコックコートの右手に、包丁がある。台にはオイルの瓶があり、まな板の上に赤い実がある。
コック帽をかぶって、コンロの前にいる画がある。手前に寸胴鍋があり、奥にフライパンがある。両手で黄色い果実を握った画では、手前に湯気の立つ寸胴鍋がある。
皿を2枚持った画もある。左の皿に麺、右の皿に葉野菜とレモン。両手で持って、こちらへ向けている。
これはエスワン ナンバーワンスタイルが川越にこのために撮った1本目、2024年2月に配信が始まったデビュー作の画だ。
その2年2か月後、同じ手が別の場所で叩かれた。
2026年4月、川越にこが料理を作る動画がXに流れた。取材記事はその反響をこう書いている。
一方で、「そんな手で料理作るなよ」「偏見だけど食べるのは抵抗ある」といった否定的な声も上がり、職業イメージをめぐる議論へと発展した。
そんな川越さんの料理動画がXで拡散され、「レベチすぎる」「食べてみたい」と大きな話題に。
レベチすぎる、食べてみたい、と書いた人がいた。そのうえで、包丁を持っている人が誰なのかを調べて、出てきた職業とその手を結びつけた人たちがいた。
「嫌いなヤツにでも食べさせたい」
作る人になった理由を、本人は小学生まで遡って説明している。
小学生のとき、私をいじめていた子たちを家に呼んでご飯を作ってあげていました。腹は立っているのに、誰かに食べてほしくて。「嫌いなヤツにでも食べさせたい」と思うくらい、人に振る舞うのが好きだったんですよ。
順を追うと、この行動はかなり手が込んでいる。まず相手を家に呼ぶ。呼ぶには自分から声をかけなければならない。材料を出し、火を使い、皿に盛り、机まで運ぶ。その全部を、腹を立てたままやっている。相手が食べ終わるまで、同じ部屋にいる。
好きな相手に作るなら、動機の説明はいらない。嫌いな相手に作る動機には説明が要る。川越にこが挙げているのは、自分の側の欲求だった。誰かに食べてほしい、が先に来ている。食べる人が誰であるかは、そこに含まれていない。
高校でも同じ頻度で作っていた。
高校時代も、3年間毎日違うお弁当を作っていました。それもあって、自分は料理が得意なのかもしれないと感じていましたね。
毎日違う中身にするには、前の日に何を入れたかを覚えていなければならない。3年ぶん、献立を更新し続けている。自分の弁当なので、食べる相手は自分だ。それでも違うものを作っている。
作ることそのものが目的の人の記録として読むと、いじめてきた子を呼んだ話と地続きだ。相手が誰であっても、作ったものを渡すところまでが一つの動作になっている。
作る場所は祖父母の店だった。東京都の離島、八丈島にある。
よろず屋です。要するに、なんでも屋さんですね。島にはコンビニがないので、コンビニみたいな役割のお店です。24時間営業ではないですけど、朝4時から開けていて、漁師さんたちが来てくれるような。
朝4時に開いて漁師が来る店だ。買いに来る人の顔が全部わかる規模の商売で、渡す相手が具体的に見えている。
その店で、本人は看板娘であり、孫だった。祖父母に育てられている。
島の外を、ほとんど歩かないまま育っている。
18歳までずっと八丈島で過ごして、それまでほとんど東京に出たことがありませんでした。 東京は修学旅行か部活の遠征で出たくらいで、京都とか大阪とか西の方もそうでしたね。島のお店は全部個人店で、コンビニなんてなかったので、お店を見てもそこがチェーン店かどうかもわからない。 東京に来たばかりの頃は、お店に入れなかったです。チェーン店を見ると全部高級店に見えて、怖くなっちゃって。そんな環境で育ってましたね。
チェーン店の前で足が止まる。値段が書いてあっても、そこが高い店かどうかの判断がつかない。比べる対象を持っていない。島と東京のあいだにある距離が、身体の側に出ている。
この状態から、調理師専門学校で実技の上位を争うところまで行く。店に入れなかった人が、店を出す側の訓練を受けに来ている。
中学のときには、島の記録を書き換えている。
島の新聞にも載るような大きな記録大会があるんですけど、そこで親の世代が作った記録のすべてを私が塗り替えたんです。
すべて、と言っている。1種目ではない。親の世代が持っていた記録を、全部書き換えている。
島の記録大会は新聞に載る。店が全部個人店で、コンビニも無い町だ。名前が紙に載る回数は限られていて、その枠を中学生のときに何度も使っている。
島を出るとき、目指していたのは料理ではなかった。
本当はイルカの調教師になりたかったんです。でも、すごく現実的に将来のことを考えてしまって。もし調教師になれたとして、怪我をしたらどうなるんだろう、60歳になったらどうなるんだろうって。次のキャリアアップが見えなかったんです。
18歳の進路相談に、60歳の自分が出てくる。ここで使っている物差しは「続けられるかどうか」だ。
「じゃあ、一番長く続けられる仕事って何だろう?」と考えたときに、祖父母のお店が思い浮かんで。飲食店なら、おじいちゃんおばあちゃんみたいに最後まで続けられる。 調理師免許を取れば、先生にもなれるし、研究者にもなれる。海外にも行けるし、家族にご飯も作ってあげられる。すごく夢があるなって。
免許を1枚取ると、そこから何本の道が出るかを数えている。先生、研究者、海外、家族。1つの資格に紐づく行き先を並べて、その本数で進路を決めている。祖父母の店が最後まで開いていたことが、職業選択の根拠になっている。
イルカを諦めた理由と、調理師を選んだ理由は、同じ形をしている。怪我をしたらどうなるか、60歳でどうなるか。答えが用意できるほうを取っている。18歳の時点で、好きなものより長持ちするものを選ぶ癖がついている。
その手で料理を作るな、と書かれた
2026年4月にXへ流れた調理動画は、広く届いた。
今年4月、料理人でセクシー女優の川越にこさんの調理動画を載せたXのポストが約1454万インプレッションを得て大きな反響を呼んだ。
普段この人の投稿を見ている人の数は、Xで18万人ほどだ。その外側まで出ている。
流れた先には、AV女優という職業を知らない人も、知っていて嫌っている人もいた。そのうちの何人かが、手のことを書いた。
叩かれたときにどうするかは、それより前に決まっていた。
デビューして間もない頃はアンチコメントに傷ついたりイラッとしたりすることもありましたが、あるとき、アンチコメントに「コメントありがとうございます!」と返したことがあったんです。 すると、そのアカウントから「すみません、実はファンなんです」と返事が来て、私の出演作品のスクショまで送ってくれました(笑)。 その出来事があってから、「どんな形でも反応してくれてありがとう」という気持ちを持つようになりました。不思議と、しつこく攻撃してくる人はいませんね。
攻撃してきた相手が、作品を買っていた。しかもスクリーンショットまで送っている。買った証拠を出したのは、送った側だ。
普通なら、匿名で書き込んでいる相手に礼を言っても何も起きない。この場合は、礼を言われた側が身元を明かして謝り、さらに買った作品の一覧まで見せている。礼を1回言っただけで、匿名だった相手が客として名乗り出た。
しつこく攻撃してくる人はいない、と本人は付け足している。礼で返されると、次の一撃を撃つ相手がいなくなる。
同じ手つきが、4月の件にも出た。
正直に言うと、この騒動は私を知ってもらうきっかけになったなと思いました。まずは「こっちを見てくれてありがとう!」という気持ちです。 もちろん、外見に対する誹謗中傷などは傷つきますが、料理人とセクシー女優を兼任している以上、今回のような批判が出るのは避けられないとも思っています。
傷つかない人だと言っているわけではない。誹謗中傷は傷つく、と自分で書いたうえで、先に礼を置いている。傷つくことと、ありがたいと思うことを、順番の問題として扱っている。
料理人として本気で向き合ってきた分、“セクシー女優”という肩書きだけで否定的に見られてしまうことに、もどかしさを感じることはあります。 ただ、私をまったく知らない人の立場になれば、そういう印象を持つのも自然なことだと思うんです。 だからこそ、私はまず“知ってもらうこと”が大事だと思っています。一番怖いのは、発信しても誰にも届かないことなので。
怖いものの順位がはっきりしている。嫌われることは1位ではない。届かないことが1位だ。
この順位で並べ直すと、否定的な書き込みは届いた証拠の側へ移る。1,454万まで広がった動画に賛否がついたほうが、届かなかった日々よりましだ。
料理人として評価されたい、という欲求のほうは別にある。もどかしさを感じることはある、と自分で言っている。それでも順位は動かさない。
批判も含めて、反応してもらえること自体はありがたいですし、マイナスな反応が来ても、“最終的には私のことを好きになってもらいたい!”と思っちゃうタイプなんですよね(笑)。
この構えが身についた場所も、本人が挙げている。中学のとき、担任が言った言葉だった。
「嫉妬されるってことは、相手は負けを認めたってことなんだよ。あなたには、あなたにしかないスキルがあるんだから、むしろ強気でいきなさい」と。 これで180度、考え方が変わりました。そのときから、「人に嫉妬されるくらいの生き方をしてやろう」って。
嫌われることを避けるのではなく、嫌われるところまで行け。そういう指示として受け取っている。
嫉妬されたら勝ちだ、という言い換えを中学生で渡されて、いまも使い続けている。この物差しでは、反発の量が自分の位置を測る目盛りだ。反発が無い状態は、届いていない状態と同じだ。
2026年9月現在、Instagram のプロフィール文はこうなっている。
🇯🇵2024.2.13 début ◽︎現役料理人 地元:八丈島 調理師/野菜ソムリエ/フードコーディネーター/ 1級小型船舶免許🛥️ /中型バイク/MT車/アドバンス🤿/ レストランサービス技能検定資格/衛生管理責任者/水上バイク 硬筆技能検定2級/リンパケアセラピスト/野菜スペシャリスト/
6行のうち4行が資格名で埋まっている。数えると13ある。
食に関するものが6つ。1級小型船舶免許、水上バイク、潜水のアドバンス、中型バイク、マニュアル車で5つ。残る2つは硬筆技能検定2級とリンパケアセラピストだ。
AV女優のプロフィール欄として見ると、明らかに向きが違う。スリーサイズも趣味も無く、取得した資格だけが並んでいる。
Xのほうには別の書き方をしている。
2024.2.13/エスワン(S1)専属✌️🖐️セクシー女優&料理人 【瞳『にこ』いをして】👀💞アイドル=ねこまんまっ‼︎🐈⬛🌙 地元:八丈島
Xには「セクシー女優」があり、Instagram には無い。Instagram のほうは「現役料理人」が先に来る。
どちらも本人が書いていて、どちらも公開されている。置く場所によって、先に出すものを変えている。Xを見に来る人と、Instagram を見に来る人は、違うものを探しに来ているという前提で書き分けている。
資格を増やす理由も、言葉になっている。
そうかもしれません。いま料理イベントに力を入れているのも、ファンの方に『料理人の川越にこ』をちゃんと見てもらえる場所を作りたいという狙いがあります。 資格をとって、さまざまなことに挑戦している、みんなが簡単にはできないことを武器にしたいからなんです。
資格の欄は、生活の記録にもなっている。バイクの免許は取ったまま使えない。事務所が怪我を心配して止めているからで、代わりに水上バイクの免許を取ったと書いている。禁止された乗り物の隣に、禁止されていない乗り物を1台足している。
2026年4月からは、箏と書道を組み合わせた舞台をロサンゼルスで始めた。習い事として1年ほど続けて、人前で弾いて書く側に回っている。ダンスのレッスンにも通い、声の出し方も習っている。資格の行に載らないものまで増え続けている。
そこまでやる理由を、返信の中で短く書いている。
生き残る為、そして唯一無二の存在を目指す為に計画して武器を揃えてるので
5人の椅子と、動かなくなった右手
調理師専門学校での成績は上位だった。
関東で一番大きい調理師専門学校に行ってました。専攻は西洋料理で。(中略)実技の成績はトップクラスでした。生徒が1000人くらいいる中で一番優秀なAクラスに入って、その中でもトップを争うくらい。
そのうえで、就職の椅子には座れなかった。
専門学校時代、1000人近い同級生が、有名ホテルの採用枠“5人”を巡り争っていました。私も必死で、その椅子をつかみにいったんです。 実際に5人の中には入れたんですけど、最終的に私だけ落ちました。理由は“女性だから”というもの。合格した他の4人は全員男性でした。
1,000人から5人に絞られるところまでは、実技で勝っている。
5人に入ったあと、そこで外された。外した基準は、努力の量と関係がない。5人のうち4人が残って、残らなかった1人が女性だった。順位とは別の欄で落ちている。
実力でつかんだはずの未来が、自分ではどうしようもない理由で閉ざされる。そのやるせなさを経験したからこそ、「誰かの価値基準だけで、自分の人生を決められたくない」、「もっと自分自身を大事にしなきゃいけない」と痛感したんです。 あの出来事は、間違いなく今の私の生き方に大きく影響しています。
ここで出した結論が「見返す」ではなかったところが、このあとの判断の全部に効いてくる。悔しさを燃料にして同じ土俵で勝ちにいく人は多い。この人は土俵のほうを疑っている。他人の物差しで測られる場所から離れる、という方向に振れている。
誰かの価値基準だけで、自分の人生を決められたくない。この一文を持ったまま、このあと職場を選び、業界を選び、名前を選ぶ。
行った先の職場では結果を出した。
でも、成績がAクラスだったのに結婚式場に就職したので、周りからは見掛け倒しみたいに思われて。(中略)その会社では、400人くらいいる中で若手として初めてMVPを獲りました。新店舗の立ち上げにも関わらせてもらって、新卒の料理人としては異例の30万円近い給料をもらっていました。
400人の中で、若手として初めての受賞だ。新店舗の立ち上げにも入っている。給料も新卒の相場からは外れている。
結婚式場に行ったことで、周囲からは格を落としたと見られていた。その評価を、数字で覆している。専門学校で落とされたときにできなかったことを、入った先でやり直している。
その先を告げられたとき、うれしくならなかった。
でも、その会社のオーナーやシェフから「このままいけば、将来は料理長になれる」と言われたときに、ふと「私の人生、ここでもう決まっちゃったんだ」って、すごく寂しくなってしまって。
昇進の予告が、期限の予告として届いている。
18歳のときに、この仕事なら先生にも研究者にもなれる、海外にも行けると数えた人だ。その人が、料理長という1本の行き先を提示されている。枝の数を基準に職業を選んだのに、残った枝が1本になった。数えるものが無くなった状態を、本人は寂しいと言っている。
やめたいとは言っていない。行き先が見えてしまった、とだけ言っている。
そこに事故が来る。
そんな時に交通事故に遭ってしまったんです。自転車に乗っていたら、車に右手をはさまれて。神経が麻痺して、使えなくなってしまったんです。
料理人にとって命でもある右手が、一時ほとんど動かなくなってしまって……。半年近く、現場で思うように働けない時期が続きました。ずっと料理一本で生きていくつもりだったので、その時はかなり苦しかったです。
包丁を持つ手が半年止まった。
作る人が作れない。相手がいても、渡すものが用意できない期間が半年続いている。子どものころの食卓から、高校3年間の弁当を経て、MVPを獲った厨房まで、この人がずっとやってきたことが、そこだけ空白になる。
しかも止まったのは右手だ。料理人にとって命でもある、と本人が言っている。専門学校で実技の上位を取った腕が、神経の麻痺で動かない。
その半年のあいだに、声をかけられている。
ちょうどその頃にセクシー女優のスカウトのお話もいただいて、「一つの仕事や場所に縛られずに働く生き方もあるのかもしれない」と考えるようになったんです。 その結果、料理人か、女優かのどちらかを選ぶのではなく、両方を本気で続ける今のスタイルになりました。
「知名度、資金集め、そして人脈」
右手がまだ動かないころ、雨の日に帽子を深くかぶって、渋谷の109の近くを歩いていた。そこで声をかけられている。
職場が渋谷だったことから、原宿に住んでいて。その日はすごく雨が降っていて、帽子を深くかぶって、ダサい格好をしていたのに、109の近くで声をかけられて。
右手が動かない半年のあいだで、身なりを整えていない日だった。
最初に声をかけてきたのは、いまの事務所ではない。
いえ、最初は別の事務所でした。そこでは、いきなりスリーサイズを聞かれたり、すぐに「撮影しよう」とか言われたりして、ちょっと怪しい感じだったんです。怖いから一度持ち帰って、3日後にその事務所に行く約束をしたんですけど、その前日に今の事務所のスカウトに声をかけられて。
一度持ち帰っている。その場で首を縦に振らずに3日の間を空けて、そのあいだに別の相手が来た。
前の事務所のことを話したら、「そんなところはダメだよ」って。「そこまで言うなら、あなたの事務所を見せてください」と返したら、事務所に連れていかれたんですよ。スリーサイズなんて聞かれず、ひたすら法律の話をされて。
見せてください、と返している。怪しいと言われた側の話を鵜呑みにせず、言ってきたほうの中身を自分の足で確認しにいっている。連れていかれた先で出てきたのは法律の話で、身体のサイズは一度も聞かれなかった。
説明が終わったら「今日はもう帰っていいよ」って。ちゃんとしたオフィスもあって、前の事務所とは全然違いました。
2社を比べて、聞かれた質問の中身で選んでいる。
葛藤があったかを聞かれて、こう答えている。
なかったですね。むしろ、その先の将来設計まで考えていたくらいで。この業界に入ろうと決めたのには、3つ理由があったんです。知名度、資金集め、そして人脈。
葛藤が無かった理由は、迷う前に用途が決まっていたからだった。挙げた3つは、どれも店を開くための項目になっている。
知名度に関して話すと、今の時代、料理人が名前だけで売れるのは難しくなった。将来、自分のお店を開くときに、知名度がないと厳しいと考えたんです。女優の活動をしながらSNSの運用を学べば、自分のお店を持ったときに、それが大きな力になるなって。
名前が売れていないと店は厳しい、という前提から入っている。腕を知ってもらう手段のほうを先に心配している。実技で1,000人の上位を取っても椅子が配られなかった経験が、この順番を作っている。
次に資金。舞台女優さんだと、アルバイトをしながら活動している人が多いですけど、それだと料理も女優も中途半端になってしまう。セクシー女優なら、そのぶん得られる額も大きいので、それを自己投資や将来の開業資金に充てられる。
両方を本気でやるには、片方をアルバイトにしないことが条件だ。時給で働きながら夢を追う形を、最初に外している。厨房に立つ日を減らさずに済む稼ぎ方として、この仕事を見ている。
料理人だけだと、コミュニティが料理業界の中だけで完結してしまう。でも、この仕事なら、カメラマンさんやメーカーさん、海外の方々ともつながれる。その人脈が、将来お店をやるときに絶対に助けになると思ったんです。
名前、金、人。1本撮ると何が手に入るかで並べている。3つのうち、店に直接使えるのは資金だけだ。知名度と人脈は、店ができたあとに効く。客が扉を開けてから集め始めるには遅いものを、扉を作る前に集めにきている。
入口の平等さも、選んだ理由に入っている。
それに、セクシー女優は、みんなデビューという同じスタートラインに立てる。舞台女優さんのように、下積みとか一切関係ない。デビューしたら、自分がどれだけ頑張るかで道が決まるので「この世界に賭けてみよう」と。
5人の椅子に座って立たされた人が、順番待ちの関係ない場所を選んでいる。ここでは配られる椅子が全員同じだと本人は見ている。手を動かした分だけ前に出られる場所、という条件で探して、業界がひとつ残った。
人脈という項目を、この仕事の効能として数えている人は多くない。現場で顔を合わせるカメラマンやメーカーの人が、将来その店を開くときの助けとして勘定に入っている。
同じ理由で入ってくる人は少ない、とも思っている。
だから、同業者からは嫌われるんですよ。みんなが、そこまで考えずに飛び込んでくる世界なので。
嫌われる、と言い切っている。同業者に好かれないことを、公開の取材で自分から言っている。中学の担任に渡された物差しがここでも動いていて、嫌われる側に振れることを避けていない。
職場には説明した。
将来のビジョンとそれに必要な知名度、資金集め、人脈についても説明しました。「お金や男性に困っているわけではない。自分の夢を広げるために、この道を選んだので応援してほしい」と。 そうしたら、素直に応援してくれました。もちろん、止める人もいましたけど。「売れるもんなら、売れてみな」と言われて、「見とけよ」って思いましたね。
名前も、このとき決めている。
閉ざされていた『川越』を私が生き返らせようと思って、この芸名に決めたんです。それが父の名字だとは、そのとき初めて知りました
実家で母子手帳を見つけ、そこに自分が名乗ったことのない名字が書いてあった。生まれてすぐ両親が離婚していて、育ったのは母方の祖父母の家だ。その名字で呼ばれた記憶が無い。
閉ざされていた、と本人は言っている。誰のものかを知らないまま口に出して、名乗ったあとで父のものだと分かっている。
芸名は普通、自分から遠いところに置くものだ。本名と切り離して、別の人格を立てるために使う。この人は逆をやった。いちばん近いところにあって一度も呼ばれなかった名前を取りに行って、いまは現場でその名で呼ばれている。
2024年2月13日、S1 NO.1 STYLE 専属としてデビューした。1本目の商品ページに載ったのは、あらすじではなく対話だった。
─離島出身と伺いました!
にこ 小さな島で生まれたんですけど、料理人になりたくて18歳で上京しました。
─すごいですね!どんな料理を作っているんですか?
にこ 和・洋・中・製菓の全般できるんですけど、今はイタリアンです!
─お菓子のこと‘製菓’って言うあたりガチ感すごいですね笑
にこ そうなんですかね?笑
「製菓」と言ったところに聞き手が反応している。趣味で料理をする人は、お菓子のことを製菓とは呼ばない。学校の科目名としてそう呼ぶ人の言い方で、専門学校を出た人間の癖が1語で出ている。
新人デビュー作の商品ページの前半が、和食と洋食と中華と製菓の話で埋まっている。
同じページの後半で、話題が変わる。
─そんなにこさんが、なぜAVに?
にこ 人口の少ない離島で育ったせいかモテたことなくて悩んでいて。
─そんな可愛くてモテないとかあるんですか!?
にこ 本当にモテなくて笑 経験も少ないので自信をつけたくて…
この2年後、同じ質問に対して本人は知名度と資金と人脈を挙げることになる。開業資金を貯めにきた、と言う。
デビュー作の中の川越にこは、モテたことがなくて悩んでいた、自信をつけたかったと言っている。どちらが本当かを決める材料はない。両方を本人が言っていて、両方が公開されている。
ただ、2024年2月の時点で世に出たのはこちらのほうだった。1本目を買った人が読んだのは、事業計画ではなく、自信の無い20代の話だ。
厨房の画のあとに、白地の黒い文字が出る。
そんな才色兼備な彼女にも ひとつだけ誰にも言えない悩みが…
文字だけの画が何枚かある。誰より女性として。輝きたくてー。自立した女性への階段を上る。悩みの中身は言葉にされず、代わりに階段という言い方が置かれている。
その次の文字で、場面が切り替わる。
SEXが始まると笑顔から一転
黒い下着の肩紐が見えている。目を閉じている。舌を出した画では、奥にベッドの柵が入っている。緑のTシャツに白いサロペットで頬杖をついていた人が、ここでは口元にモザイクを置かれている。
配信から2か月が経った2024年4月、スポーツニッポンが4週続けて独占記事を組んだ。新聞が同じ新人を4週続けて扱うのは多くない。翌5月には週刊プレイボーイの「期待の新人AV女優10人」に選ばれている。
職場で売れるもんなら売れてみな、と言われてから2年は経っていない。
最後に本人が話している。
聞き手が監督の評価を伝えると、返事はこうなる。
─でもエロ過ぎたって監督誉めてましたよ!
にこ えー、本当ですか!?本当だったらいいんですけど…あんまり自信はないです笑
─体も柔らかくて、フェラの顔をめちゃくちゃ可愛くて、潮もいっぱい吹いていて、あと…
にこ 恥ずかしいのでそれ以上言うのはやめてください笑
─笑笑
にこ 見られるの恥ずかしくなってきました…
撮り終えたあとの取材で、これから何が売られるのかを聞かされている。褒められている項目を並べられて、途中で止めている。ページの見出しには「男を虜にする彼女の真の才能は、SEXに詰まっていた」と入っている。
─見るのが楽しみになってきました!笑 それでは、最後に見てくださる方々に一言お願いします!
にこ えっと、皆さん、私なんかの作品を購入して頂いてありがとうございます。人生で一番緊張して、人生で一番恥ずかしかったんですけど、頑張ったのでたくさん見てくれたら嬉しいです!
ピンクのニットを着ている。紺の上着の男性に髪を手で触れられて、両手を胸の前で合わせ、見上げている。
快楽で瞳トロける天性のモテSEX 新人NO.1STYLE 川越にこ AVデビュー
FANZAで詳細を見る「いまは料理人のにこにログインする」
厨房と撮影現場を同じ日に行き来する方法について、本人はこう説明している。
現場ごとに求められるものは全然違うので、意識的に切り替えるようにしています。 自分の中に“アバター”がいる感覚というか……「いまは“料理人のにこ”にログインする」みたいな感じです(笑)。 その明確な切り替えがあるからこそ、どちらの仕事にも本気で向き合えているのかなと思います。
ログインする、と言っている。着替えるでも切り替えるでもなく、別の口座に入るような言い方をしている。ログインする以上、いつでも抜けられて、いつでも戻れる。どちらが本体かという問いを立てずに済む言い方でもある。
厨房のにこと、現場のにこがいて、同じ日に両方を使う。
写真集の撮影とAVの撮影の違いも、同じ枠で語っている。
丸谷さんからは「ポーズを決めずに、そのままそこにいて」と言われて。AVの撮影は動画なので演技も意識しますが、丸谷さんとの撮影では、その瞬間に感じたままに動いています。
そこにいるだけでいい撮影と、演技も意識する撮影を、本人が分けている。作品のほうは後者だ。
2024年2月からの2年7か月で、FANZAに並んでいるのは138本。うち1人で出ている作品が44本で、残りの多くは他の女優と一緒に入っている総集編だ。単独作だけで月に1本強のペースになる。別の部屋に入って、別の役でログインし直している。
そのあいだに、作品を買った人と料理を食べに来る人が同じ人になる場所も作っている。2026年2月にはデビュー2周年に合わせて三日間の料理イベントを開き、8月にはラジオの公開収録で振る舞う豚汁を20人前、自宅で仕込んだ。同じ材料で自分の賄いも作ったと書いている。
厨房のほうも止まっていない。
いまは女優7割、シェフ3割くらいのバランスで活動しています。
料理の仕事がある日は、朝6〜7時くらいに出勤して、夕方16時頃まで厨房に立っています。
その後に引き継ぎをして、撮影やインタビューなど別の仕事に向かうことが多いですね。
同じ日のうちに厨房を出て現場に入る。2026年2月には、朝3時に起きて仕込みをしてから昼の撮影に行った日のことを書いている。2026年7月に九州の呼子で市場の通りにある海鮮屋へ入ったときは、店の人に料理人のにことして気づかれている。
身体の作り方にも、両方の職業が入っている。
ただ、料理人なのにガリガリだと「本当に料理してるの?」と思われてしまうし、島の人間なのに肌が真っ白なのも不自然。自分のブランドを崩さないように、健康的な体型を維持することは心がけていました。
厨房に立つ人の腕として見られても持つ身体を、撮られる側の身体として作っている。
入っている部屋と、そこにいる相手が、毎回違う。
好かれている丸一日
白い長袖の上に緑のサロペットを着て、遊歩道にいる。屋外の別の画では肩に白いバッグの紐がかかり、横顔の画では首に細いネックレスが見える。
デビューから2か月、2024年4月の1本だ。
青いシャツの後ろ頭越しに川と対岸の高層ビルが入る画がある。灰色のカーディガンの男性の顔が画面いっぱいに入る画もあり、奥に石段が見える。相手の顔が何枚にも入っている。
両手を頭の上に上げた画がある。右腕をこちらへ伸ばした画もあり、その奥に街並みが写っている。ガラス張りの店先の画では、歯が見えている。屋外で男性と並び、口元を手で覆っている画もある。
車の後部座席に移る。同じ緑のサロペットのままだ。
部屋に入ると、窓の外に赤い塔が立っている。ソファに座って、その塔を指さす。モノクロになった画では、窓の右に黒い人影がある。窓際で紺のシャツの男性が顔を寄せてくる。夜になると、窓の外の別のビルに緑の光が並ぶ。
黒い枠で囲まれた画もある。棒状のものを口元に持っているところ。枠の外は黒く落ちていて、画面の中にもう1枚の画面がある。
この1本にはこう書かれている。
「私のセックス、ものすごい!」ですよ笑!無邪気でウブな笑顔を見せる‘川越にこ’の裏に隠された卑猥で淫乱な性獣FACK…。恋人的距離感で僕だけに見せてくれる表情。唾液も、汗も、愛液も、汁と言う汁が混ざり合う!時間を重ねる毎に親密になっていく2人の性交。理性を失い、快楽に溺れ、秘めた欲望を喘ぎ声と共に吐き出す。天性のあざとさ、天性の人懐こさ、天性の腰使い。心の壁が取り除かれ、欲望に身を任せた性交を魅せる…
丸一日を1本にしている。遊歩道、車の中、窓に赤い塔が見える部屋。昼の遊歩道と夜の遊歩道が、どちらも入っている。
緑のサロペットは、屋外の画にも、ソファの画にも出てくる。
この1本の相手は、彼女のことが好きだ。恋人的距離感で僕だけに見せてくれる表情、と紹介の文言にある。誰かに何かを渡すために、口説く必要も、嫌われる覚悟も要らない。手を頭の上に上げ、店先で歯を見せている。
デビュー作の商品ページで、本人はモテたことがなくて悩んでいた、経験も少ないので自信をつけたかったと話していた。その2か月後に撮られたのが、丸一日ずっと好かれている1本だ。自信をつけたくて来た人に、業界が最初に用意した時間がこれだった。
緑のサロペットで、紺のシャツの男性が顔を寄せている。歯が見えている。
20日目の帯
縦縞の部屋着で、壁ぎわの床に脚を伸ばして座っている。奥のハンガーに服がかかっていて、生活している部屋の見た目をしている。画面の下に白い文字が出る。
男優さんの到着が遅れてます
デビューから5か月、2024年7月の1本だ。撮影の日ではない日が入っている。
そこから日付が進む。布団の上に横たわった画に、左下のピンクの帯で「禁欲生活 10日目」と出て、右に「オナニーしかけてしまう…」と添えられる。夜の屋外に移る。ベージュのダウンジャケットを着て、手に袋を提げている。帯は「禁欲生活 14日目」、添え書きは「コンビニ帰りに愚痴ってます」。
白い部屋着で床に座り、こちらを見ている画には「禁欲生活 20日目」と出る。奥に洗濯物と壁が写っている。添え書きは「男優さん見て欲情してしまう」。
コンビニから帰る道も、洗濯物のかかった部屋も、作品の中身として撮られている。夜の屋外でダウンジャケットを着て袋を提げた姿まで入っている。
日付の帯が出ているあいだ、相手はまだ来ていない。10日、14日、20日。映っているのは1人でいるところだけだ。
【一か月前の余裕は、もう1mmもない…!】
人生初の禁欲、人生初の焦らし、人生初のトランス絶頂 欲しくてたまらないチ●ポを前に恍惚の表情に!! 腰をうねらせ、エビ反り、オスの性器を吸い込む!
「こんなにもおチ●ポが欲しくなっちゃうなんて…」
1ヶ月の禁欲を経て… 瞳が大きな可愛すぎる美少女が 禁欲×媚薬漬けビッキーーン崩壊性交
1か月前の余裕、と書いてある。余裕があった、と過去形で書かれている。減っていく過程のほうを日数で見せている。
到着を告げる文字が画面に出る。縦縞の部屋着のまま、黒いシャツの男性が横にいる。黒地に白文字で「焦らされて」と出る画もある。壁に手をついて前かがみになっている画の左には、鏡が写り込んでいる。
18歳で60歳を計算した人が、ここでは日数を数えられる側に置かれている。何日目にどうなったかを外から記録されて、それが商品になる。渡されるのを待つ立場で20日を過ごしている。20日目の帯が出ている画では、床に座ってこちらを見ている。
途中に、ピンクの壁を背にした画が入る。黄色い上着に黒いトップスと白いフリルで、ソファに座って腕を組んでいる。日数の帯が出る画とは別の場所で、服も整っている。20日ぶんを振り返る側に回った姿が、ここに置かれている。
縦縞の部屋着で、室内で前かがみになっている。奥に鏡と機材が写っている。画面の下に赤い文字が出る。
控室でオナニーを始める…
黒い下着で、胸に器具がある。目を閉じている。男性が瓶を持っている。
終電を逃した夜
白いTシャツに赤いエプロンを掛けて、椅子に座っている。向かいに白シャツと赤いエプロンの男性が座り、テーブルには皿とカップが置かれている。同じ色のエプロンを着けているので、同じ店の人間だと分かる。
デビューから7か月、2024年9月の1本だ。
白いTシャツのまま、両手を胸の前に置いた画がある。口が開いている。奥に木の壁とドアがある。別の画では、左に暗い緑の布があって座っている。黒板には「Smile Cafe」の文字と価格が並んでいる。
タイトルは長い。状況の説明が全部入っている。
終電逃してセクハラ店長とまさかの相部屋に…大嫌いなのに感じ、大嫌いなのに濡れ、大嫌いなのに喘ぎ、大好きな彼氏にウソをついてハメまくってしまった 川越にこ
終電、相部屋、彼氏。3つの条件が並んでいる。電車が無く、部屋がひとつで、別の場所に待っている相手がいる。
中身のほうはこうなっている。
大好きな草食系彼氏がいるのに 大嫌いな肉食系店長に目を付けられて不意の相部屋に…
初めてのデカチンに、絶叫イキ。
デカチンの快楽にハマってしまった女子大生‘にこ’はいつの間にか店長のチ●ポを求め… 彼氏への罪悪感と、背徳感が、不覚にも快楽を増幅させる…! 「店長のおっきいおチ●ポもっと欲しいですぅぅうう!!」
白いフリルの長袖で、電話を耳に当てた画がある。波模様の壁の前と、ピンクの壁と木のドアの前だ。同じ服のままドアの前に立った画もあり、左の壁に機器が付いている。別の場所にいる相手と繋がったまま、壁の違う場所に立っている。
部屋には、チェックのシャツの男性が離れて立っている画がある。手前に白いベッドと観葉植物があり、ピンクの照明がある。近づく前の距離が、1枚に収まっている。
ベッドの上で、チェックのシャツの男性が顔を寄せてくる。白い上衣で、目を閉じている。仰向けになった画では、口が開いている。ピンクの照明の下で顔だけを捉えた画では、目を閉じたまま口元にモザイクが置かれている。顔を上に向けた画もある。
赤い塔の見える部屋の1本では、相手は彼女のことが好きだった。この1本では、好かれる必要がない。相手はすでに目を付けていて、断る理由も逃げる場所も減っていく。
誰かの価値基準だけで自分の人生を決められたくない、と言って業界を選んだ人が、判断のほうを自分で動かせない役をやっている。嫌いだという結論は店の制服のまま置かれて、身体のほうはピンクの照明の下で別の答えを出している。
カフェの画がもう一度入る。白シャツに赤いエプロンで、台の上に脚を上げている。左下に男性の頭があり、奥に瓶がある。
終電逃してセクハラ店長とまさかの相部屋に…大嫌いなのに感じ、大嫌いなのに濡れ、大嫌いなのに喘ぎ、大好きな彼氏にウソをついてハメまくってしまった 川越にこ
FANZAで詳細を見る被害者 川越 にこ (22)
赤い花柄の白い浴衣で、コップを口につけている。右腕を横に伸ばしている。奥に障子がある。
デビューから1年9か月、2025年11月の1本だ。
黒い画面に、白い文字が出る。上に小さく「解体工」、下に大きく「被害者 川越 にこ (22)」。もう1枚には「被害現場 温泉旅館 ●●湯」とある。事件の調書の書式で、これから起きることが先に告知されている。
タイトルのほうも状況を全部書いている。
オッサンばっかりの職場の社員旅行に娘ほど歳の離れた隙だらけ新卒社員が唯一の女性で参加! このあと風呂を覗かれ媚薬を盛られ全社員にチ●ポ挿れられちゃいます。 川越にこ
唯一の女性で参加、と書いてある。
若くて隙だらけの新卒社員、にこが男しかいない会社の社員旅行にひとり、紅一点で参加。 おじさんたちの視線に気づかぬまま風呂を覗かれ、 宴会ではこっそり媚薬を盛られ… カラダは火照り、股間は濡れだす…・ 理性を奪われたまま次々と押し寄せる欲望の波… ち●ぽ、ち●ぽ、ち●ぽ、ち●ぽ…・・
歳の差も羞恥も関係ない。
全員挿入の狂宴が、いま、はじまる。
1,000人から5人に絞られて、残った4人が全員男性で、落とされたのが自分ひとりだった人がいる。その人が、部屋にいる女が自分ひとりという設定を演じている。役の年齢は22歳と画面に出る。
廊下の画がある。浴衣の男性が戸の陰から奥をうかがっている。その先に明るい戸口がある。
布団の上の画もある。赤い花柄の浴衣で、周りを浴衣の男性が囲んでいる。奥に障子がある。浴衣がはだけて白い下着が見えている画もある。畳の部屋で座位になった画、障子の前に複数の男性の背中が並んだ画、白い壁の前に男たちが立っている画。どの画にも、男が複数いる。
顔を捉えた画では、口に黒い瓶の口が入っている。黒い瓶の画は2枚ある。別の画では白い浴衣を肩から落として赤い帯が残り、緑の枕のある畳の上で右腕を頭の上に上げている。
浴衣の男が数人いる画の中に、1人が手に持った機器をこちらへ向けているものがある。
身体が濡れている。脚を上げられ、顔に白い液がかかっている。和室の画では、窓の外が明るい。
タイトルは「全社員」と書いている。人数は伏せられていて、画に入っている男を数えても、それが全部かどうかは分からない。
手で口を開かれている。白いものが口元にある。
写真展に、いじめていた人たちが来た
出身地を公表すると決めたときのことを、本人はこう説明している。
島はコミュニティが狭いので覚悟はしていましたが、戸惑いや心配の声も多かったですし、距離ができてしまった関係もありました。 それでも、私の中では“隠して続ける”という選択肢はなかったんです。 どこで生まれ育ったかも含めて自分。隠すくらいなら最初からやらないほうがいい。背負ってやっていく姿を見せれば、いつか応援に変わると信じていました。
島の店はすべて個人店だ。祖父母がよろず屋を開けていて、漁師が朝4時に買いに来る。出身地を書くことは、実質的に家を書くことに近い。
隠して続ける選択肢はなかった、と言い切っている。デビューの時点で、戸惑いや心配の声が来ることも、距離ができる関係が出ることも、想定に入れている。そのうえで、いつか応援に変わると信じていた、と続けている。信じていた、という言い方をしているので、このときはまだ結果が出ていない。
祖父母の側には、しばらく届かなかった。
おじいちゃんは、私がこの活動を始める直前に亡くなってしまったんですけど。おばあちゃんには、最初の1年間はつらい思いをさせてしまいました。島の人たちから「あんたのところの孫、大丈夫か?」「男に引っかかったんじゃないか?」とか、いろいろ言われたみたいで。
祖父母のうち、祖父はデビューを見ていない。活動を始める直前に亡くなっている。
祖母には1年ぶん、島の声が届いている。孫が大丈夫か、男に引っかかったんじゃないか。狭い町で、顔のわかる人たちから直接言われている。本人が受けた分ではなく、家に残った人が受けた分だ。
変わった日付がある。
デビュー1周年のときに、「週刊プレイボーイ」さんでデジタル写真集を出していただいて。その撮影で八丈島に帰ったんです。私がたくさんのプロの方に囲まれて、ちゃんと仕事をしている姿をおばあちゃんに見せて、ようやく安心してもらえました。泣いて喜んでくれましたね。
説明ではなく、働いているところを見せて片がついている。
島に撮影隊が入る。たくさんのプロに囲まれて、その中心に孫がいる。仕事として成立していることが、人数で伝わった。泣いて喜んでくれた、と本人は書いている。
デビュー前の見込みが、まず身内で1件、当たった。
『TRITON』は3冊目の写真集で、撮る側から動いている。
この写真集は、デビュー前に出た「週刊ポスト」のグラビアがきっかけなんです。そのときに撮ってくれた写真家の丸谷嘉長さんとメイクの佐藤寛さんが、デビューして半年くらい経った頃に「川越にこという女優が忘れられないから、もう一度撮りたい」と連絡をくださって。
さらに丸谷さんが、「この子には、ただ撮られるだけじゃない、もっと奥深いものがある。この子の生き方を撮っていきたい」とまでおっしゃってくださって。写真集を出す企画は決まっていなかったんですけど、丸谷さんが自腹を切って、何度も撮影を重ねてきたんです。
出版の話が決まる前に、撮る側が自分の金で1年以上撮り続けている。
デビュー前の週刊ポストのグラビアで一度撮って、半年後に連絡が来ている。忘れられないから、もう一度撮りたい。そこから企画も予算もない状態で撮影が重なり、最後に写真集になった。
写真集のテーマは「水」で、天から降った雨が、富士山の雪解け水となり、滝になり、川になって、海へ流れていく。そして、いずれは私の故郷である八丈島にたどり着く。
顔を変えない理由も、この文脈で説明している。
顔をいじることはしないようにしています。写真集は、その時々の人生を切り取るものだと思っているんです。初々しいデビュー時から、少しずつ大人になっていく。その変化を写真に残していくのが写真集の醍醐味なので、顔を変えてしまったらその価値がなくなってしまう気がして。
『TRITON』は2026年6月12日に徳間書店から出た。発売に合わせて、6月8日から14日まで写真展が開かれている。
会場で出した料理の魚は、本人が釣ったものだった。
頑張って休むことなく5時間ぶっ通しで釣りしてきました
島寿司、島のりの味噌汁、明日葉のパウンドケーキ、岩のりの佃煮、パッションフルーツドリンク。八丈島の企業と生産者から協賛を受けて、島の食材で組んでいる。
写真展の特典に料理を出す、というところまでは企画で決まる。魚を自分で釣りに行くところは決まらない。5時間ぶっ通しで釣って、捌いて、冷凍している。船を出してくれた島の店があり、そこの名前も本人が出している。
高額の特典を買った人のところに、その魚が回る。
来た人の内訳を、本人が書いている。
会期の7日間で、一般の来場者は500人を超えた。関係者を入れると600人を超える。その中に、こういう人たちがいた。
私の過去を知る人たちがたくさん来てくれたんです。地元の友人、専門学校の恩師や仲間、過去の職場でお世話になった方々まで。中には、かつて私をいじめていた人たちの姿もありました。
かつていじめていた人たち、と本人は書いている。小学生のとき家に呼んで飯を作っていたのも、いじめていた子たちだった。
あのときは彼女のほうから声をかけている。家に上げて、食べ終わるまで同じ部屋にいた。
十数年経って、同じ呼び名の人たちが今度は自分から来ている。
声をかけたのは、彼女ではない。
白衣に眼鏡、診察台の横
白衣に黒いスカートで、手に紙を持っている。画面は緑の枠に囲まれていて、左に「RETRO FILM」「PLAY」の文字がある。2026年9月の1本だ。
眼鏡をかけ、髪は明るい茶色だ。右手を髪に当てた画に、白い文字が重なる。
performed by NIKO KAWAGOE
演じる人の名前が、ローマ字で入っている。デビュー作の最後にもローマ字の名前が出ていた。あのときは窓辺に白い衣があって、ここでは白衣に眼鏡だ。
緑の枠の中には、英語がもう1行ある。
This is just a medical massage
これは医療行為にすぎない、と先に断ってある。断らなければならない何かが、このあとにあるという書き方だ。
白衣に眼鏡で、歯が見えている。
優しい院内人気No.1美人女医‘にこ’先生が患者のペニスを抜きまくる!
彼女の元には腰痛やEDで悩む男性患者が訪れる。
「あくまでこれは医療行為ですから」
治療にかこつけたエロエロ女医が 極女の下半身マッサージで、溜まった精子を根っからごっそり搾り取り!
焦らし手コキ オイルまみれの密着騎乗位 果ては高速しての強●排精まで!
診察室だろうがおかまいなし ヌイてヌイて抜きまくり!
来る相手は選べない。腰痛の人もEDの人も来る。そのかわり、来た相手に何をどこまでするかを決めるのは彼女のほうだ。嫌いな相手にでも作ったものを出してきた人が、ここでは相手に何をどこまでするかを自分で決めている。
白衣に眼鏡のまま、右手を上げて左手を前に出した画がある。白衣の袖から両手を前に出した画もある。眼鏡をかけて横を向き、舌を出している画が続く。
白衣を着ていない画が入る。白い袖なしのニットで右手を上げている。奥に明るい窓がある。横を向いた画では髪を2つに分けていて、奥にカーテンがある。前かがみで手を前に出した画もある。
ピンクのレースの下着に、両側から手が添えられた画がある。眼鏡をかけたまま黒い柄物の下着と白衣で、奥に赤い光が灯っている。顔を捉えた画では口が開いていて、舌が出ている。診察台の上で、白い紐状の衣類を着けている。
デビュー作では、白いコックコートの右手に包丁があった。2年7か月後の画では、手に白い手袋をはめている。
眼鏡をかけたまま、上半身は裸だ。白い手袋の手がある。奥に丸い照明と機器。
美人の自覚ありまくりの女医さん、色気全開で患者がギンギンになったら…ペニスマッサージまでしてあ・げ・る 川越にこ
FANZAで詳細を見るこんな人におすすめ
- 好きでもない相手に流されていく話が読みたい人:終電を逃して同じ店の店長と相部屋になり、別の場所にいる相手に電話をかけながら朝を迎える話がある
- 待っている時間ごと見たい人:禁欲の日数が画面の帯で進んでいく作品がある。相手が到着するまでに、コンビニ帰りの夜道と洗濯物のかかった部屋が入る
- 最初から好かれている場面が見たい人:窓の外に赤い塔が見える部屋で丸一日を過ごす、デビュー2か月目のデート作がある
- 決める側にいる人が見たい人:白衣に眼鏡で「あくまでこれは医療行為ですから」と言う、2026年9月の最新作がある
まとめ
嫌っている相手にこそ、出してしまう人だ。
小学生のときは、いじめてきた子を家に呼んで飯を作った。アンチコメントに礼を言ったら、相手は作品を買っていたと名乗り出た。料理動画に「そんな手で料理作るなよ」と書かれた月に、本人が最初に言ったのは「こっちを見てくれてありがとう!」だった。そして写真展の会場には、かつていじめていた人たちが来ている。
終わりの時期は自分で切ってある。
女優活動は、30歳になるまで続けようと思っています。デビューしてから7年というのが、1つの区切りになるんじゃないかと。
その先に置いてあるものは、18歳のときから変わっていない。
ずっと変わらない目標は、“オーベルジュ(宿泊施設付きレストラン)”を作ることです。
単に料理を出すだけでなく、食材の調達、空間づくり、そこに箏や書道のパフォーマンスも絡めて、場所自体を一つの『体験』にしたい。
今やっている活動や資格も、私の中ではすべてオーベルジュという夢に向かって一本の線で繋がっています。
最終的には『川越にこが作るものだから行きたい』と思ってもらえる存在になりたい。場所や肩書きに縛られず、自分の軸だけで仕事ができる人になれたらいいなと思っています。
肩書きについても、本人の言い方がある。
私は、セクシー女優とか料理人とか、そういう肩書きではなく、「川越にこ」という1人の人間として、何を届けられるかを大事にしています。ジャンルに縛られず、自分らしい表現を続けていきたい。
次の1本は2026年10月9日に出る。
無料の動画はネット上にいくらでも転がっている。それを承知のうえで書くと、川越にこの場合、購入がどこへ行くかは本人が先に公表している。開業資金だ。店を持つための金を作りにこの仕事へ来たと本人が言っていて、その店の構想まで具体的に話している。1本の購入が、八丈島に建つ宿の材料費のどこかになる。気に入った作品があるなら、FANZAで正規版を買うのがいちばん直接届く。
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