天馬ゆい特集|私のこと見てくれないなら、AVで私のこと見て
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天馬ゆい
- デビュー年
- 2021年
- 出演作品数
- 875本以上
天馬ゆいは、趣味の欄を2か所に書いている。
FANZAの登録欄に並ぶのは、ゲーム、アニメ、映画・芝居、潮吹き。所属事務所クローネの公式ページに並ぶのは、ゲーム・アニメ・映画、それに料理。前の3つは同じだ。4つ目だけが入れ替わる。片方には潮吹きがあり、もう片方には料理がある。
3か所目もある。業界メディアの掲載プロフィールは趣味の欄を持たず、代わりに特技として「芝居、潮吹き」の2語を載せている。趣味から特技へ移ると、潮吹きは残って料理が消える。
趣味の欄は身長やスリーサイズと違って、本人が自分で書いて登録する。だから書き分けられている事実そのものが、この人について何かを言っている。どちらかが嘘だと決める前に、まずどこから来た人なのかを見たほうがいい。
2021年6月10日、デビュー作が配信された。桜並木の歩道を、白いブラウスとキャメルのスカートでこちらへ歩いてくる。肩に小さな鞄を掛けている。白い文字で「YUI TENMA AVDebut」と出る。髪は黒いショートボブで、前髪が眉にかかっている。1998年2月14日生まれ、身長162cm。この日の画が伝えるのは、前髪の長さと鞄の小ささくらいだ。
そこから5年が経った。FANZAで単品配信されている動画は875本を数える。専属はどこにもない。どの看板も背負わないまま、どの現場からも呼ばれてきた女優だ。
Xのプロフィールには「天までイッちゃえ♥天馬ゆいです」とある。「天ちゃんって呼んでほしいな」とも書いてある。ハートの絵文字が緑で、アニメとゲームの2語が並び、サブアカウントの名前まで書いてある。フォロワーは13.2万、ポストは6,003件。
同じ人のInstagramは、まったく温度が違う。自己紹介は3行しかない。
Yui Tenma krone所属 / セクシー女優
天ちゃんも、天までイッちゃえも無い。所属と職業だけだ。9.3万人が見ているアカウントに、投稿は33件しか置かれていない。書く量で集めた数字ではないし、同じ調子で書いてもいない。
ここでも、この人は場所によって書き分けている。
デビューから1年半のインタビューで、天馬ゆいは自分の名前に鍵括弧を付けて話している。仕事の「天馬ゆい」と、家の「私」。同じ体で両方をやっている人が、その2つはまったく別だと言い切る。潮吹きが片方の欄にしか無いのは、そのためだ。
もっとも、この人の話は欄では終わらない。学校に行けなかった人が、なぜ仕事のほうが向いていると言えるのか。そこが先だ。
「嫌です」と言えなかった
2022年12月6日、デビューから1年半の天馬ゆいが業界メディアの取材を受けている。載った前置きに、この人をどう見ていたかが書いてある。
キメ細かい透き通るよう美肌で大人気の実力派AV女優、天馬ゆいさん。特撮動画のヴィラン役を演じるなどAV以外にも才能を発揮。多忙スケジュールの合間を縫って、不登校だった学生時代やAVデビューした経緯、恋愛感など詳細に語ってくれた貴重なインタビュー。
(XCITY インタビュー前編、2022年12月6日)
多忙スケジュールの合間、と書かれている。この年、彼女は87本を配信している。その合間に呼ばれて、最初に出てくるのが学校の話だ。
天馬ゆいは、学生時代のことを笑いながら話す。
「学生時代は、超陰キャで不登校だったんですよ。たぶん、小学校くらいからちょいちょい学校行けてなくて」
ちょいちょい、という言い方をする。行ける日と行けない日が、小学生の頃から交互に来ていた。
きっかけを聞かれて、幼稚園の話から始める。
「きっかけは、元の性格もあるし、幼稚園で軽~くいじめみたいのにあって。そこから馴染めてないっていうか、人に気を使っちゃうタイプで「疲れる!」みたいな。人にどう思われてるのか、誰がなに考えてるのか、人を傷つけないようにしないととか、発言に気を使ったりとか、色んなことを考えてたら人間関係疲れすぎちゃって。それで気を使うのに疲れちゃって、だんだん学校に行ったり行かなかったりで、ほぼ不登校みたいな感じで。楽しくても疲れるな、なにより一番疲れるな!ってなっちゃって(笑)」
楽しくても疲れる、という順序が効いている。行かなかった理由は、人といる時間そのものの消耗にあった。
人にどう思われているのか、誰が何を考えているのか。傷つけないようにしないと。発言に気を使う。並んでいるのは全部、相手の側を見ている作業だ。自分が何を思ったかは1つも出てこない。それを一日ぶん続けると、楽しかった日でも疲れが勝つ。
クラスで浮いている子と仲良くなった話も出てくる。その子が依存してきて、学校にいる間ずっと一緒にいる関係ができた。
「女子特有の常に一緒にいるっていうのが無理で、ちょっとクラスで浮いちゃってる子と仲良くなったんですけど、その子がすごい私に依存してきちゃって、学校行ったら朝から晩まで一緒にいる、みたいのがちょっとつらくなって、逃げがちになったりとか」
男子の話になると、もっと具体的だ。
「あと男の子で、たぶん私に気があるんだろうけど、頭を急にポンポンしてきたりとか、カッコつけて上着掛けてきたりとかする人がいたんですけど、「無理っ!」ってなっちゃって。私、「嫌です!」とか「止めて!」とか言えないんですよ、誰に対しても。相手を傷つけちゃうかもしれないって思っちゃうから。で自分が学校に行かなくなるっていう(笑)」
頭を撫でられた。上着を掛けられた。どちらも、好意として差し出されたものだ。嫌がらせなら断る理由が立つが、好意は断ると相手を傷つける。だから断れなかった。断れないから、学校のほうを消した。
浮いている子との関係も、男子との関係も、構造は同じだ。相手には悪意がない。悪意がないぶん、逃げ道が自分の欠席しか残らない。
嫌だと言えないことと、学校に行かないことが、この人の中では一本の線でつながっている。相手を傷つけないための選択肢が、自分が消えることしか残っていない。本人はこれを逃げ癖と呼ぶ。
「いや~、もう逃げ癖ですよ!いじめられてる訳じゃないのになんで行けなかった?って言われるんですけど、私は嫌だった(笑)。馴染めなかったんですよ、その空気に。楽しくないし、すごい気を使うし。でもバイト始めたらすごい楽しくて仕事の方が向いてたんですよね」
同じ人間関係なのに、バイトは楽しかった。ここが分かれ目だった。理由を本人が言葉にしている。
「それもあるし、仕事って一定の壁があるじゃないですか?仲良くなりたかったらなればいいし、別に気が合わなければ、挨拶だけで済ませられるし。無理やり仲良くならなくてもいいし、職場の人も一線を超えてこないし、それが楽で、仕事の方が向いてるなって」
一定の壁がある。だから楽だ。裏返せば、壁のない場所では消耗する。学校には壁が無かった。朝から晩まで隣にいる友達にも、頭を撫でてくる男子にも、境界が引かれていない。
挨拶だけで済ませられる、という一言がこの人の基準を示している。仲良くなってもいいし、ならなくてもいい。選べる状態そのものが楽なのだろう。現に、仲良くなりたかったらなればいい、と先に言っている。
そのうえで、自分の許容量を体の話として説明する。
「私キャパがすごく狭いので浅く広くができなくて、家族、恋人、友達以外って体足りんくない?って。誘われても断ったりしなくちゃいけないこととかがでてくるじゃないですか?あと付き合いで、いま気分じゃないから無理!とかって言えなくって疲れちゃうんですよね」
体が足りない、という言い方をする。時間でも気持ちでもなく、体。
数値の側にも、この人には食い違いが残っている。スリーサイズはFANZAの登録がB81のCカップ、事務所公式がB76のCカップ。ウエスト58とヒップ85は両方とも同じ値で、バストだけが5cm違う。血液型はFANZAの欄が空で、出身地も空のまま。1998年2月14日という生年月日と、162cmという身長だけが、どこを見ても同じ数字で並ぶ。
書かれる場所によって、この人は少しずつ違う姿で登録されている。趣味の欄も、そのうちの1つでしかない。
その人が、いちばん壁の薄い仕事を選んだ。
どこにも属さないまま
5年でこれだけの本数という数え方をすると、大きな組織に守られてきた人を想像しやすい。実際は逆だ。
天馬ゆいには専属が無い。作品の多い順にメーカーを並べると、ケイ・エム・プロデュース99本、ムーディーズ52本、BAZOOKA48本、レアルワークス47本、DOC28本。ここから先は20本台が4社、十本台が6社と細かくなっていく。上位15社を足して467本。残る408本は、ここに名前の出ないメーカーに散っている。
年ごとの本数はこうだ。2021年が19本。2022年に87本まで増え、2023年が127本、2024年が188本、2025年が242本。2026年は10月配信予定のぶんまで含めて212本が並んでいる。デビューした年を除けば、毎年前の年を上回ってきた。
2023年1月3日の夜、彼女はXに2行だけ投稿している。
【 大事なご報告 】 引退はしませんが‼️
本文はこの2行だけだった。引退はしません、と先に否定を置く書き方をしている。54.1万回再生され、2,032のいいねが付いた。
この年の配信は127本で、前の年を上回っている。
ただし、875本を額面どおりに受け取ると人物を見誤る。ベスト・総集編が262本、4時間以上の長尺が324本。片方だけに数えられるわけではないので足し合わせても意味は無いが、どちらも詰め合わせの側だ。シリーズで最多のVR BESTだけで61本ある。彼女が主役として1本を通して出ている単体作品は264本で、残りの多くは、他の女優と一緒に束ねられた詰め合わせだ。この人の本数には、過去の出演が別の形に組み直されて棚へ戻ってくるぶんが含まれている。
専属がいないということは、毎回よその現場に入るということでもある。そこで何を見ているかを、本人が言っている。
「すごい上手な子がガンガンかましてると『うわぁ~、やべぇ』」
(XCITY インタビュー後編、2022年12月27日)
上手い、ではなく、やべぇ。圧されている側の言葉だ。デビューから1年半の時点で、この人は毎回よその上手い人を見ていた。
それでも現場そのものは、彼女を変えている。学校で消耗していた人が、仕事の場で人との関わりを増やした。
「そう、だからAV初めてから変わったんですよね!幅広く関わるようになって、こういう人もいるんだって。飲みに行くのが増えたからかもしれないです。お酒一滴も飲まなかったんですけど、去年くらいからお酒飲む人が周りに増えたりして、仲いい女優さんもめっちゃ飲むし、そういうのからちょっとずつ関わりが増えて、ひとりでよく行くバーとかできたりして、だいぶ成長したな!って。お酒飲むようになって、幅広く、知らない人とも関わる楽しさみたいなのを覚えました、やっと(笑)!」
一滴も飲まなかった人に、ひとりで行くバーができた。学校では朝から晩まで一緒にいる友達ひとりに潰されていた人が、知らない人と関わる楽しさを覚えた、と言う。順番が逆転している。仕事のほうが先に、この人の生活を広げた。
天職だと思っているかと聞かれて、迷いなく答える。
「そうですね!素質があったというかめちゃめちゃそうかもしれないです」
呼ばれる場所は撮影現場の外にもある。2024年8月には台北のTRE台北国際成人展に参加し、9月には埼玉のしらこばと水上公園で開かれた撮影会に出ている。特撮動画でヴィラン役を演じたこともある。現役のプロデューサーが回すYouTubeの番組にも、ゲストとして呼ばれた。
現役AVプロデューサーのTODO監督が、怒涛の1発録りで撮影現場の裏側をお届け!!第53回目のゲストは、大人気の女優さん 天馬ゆいちゃんの登場です
(Todo オン ザ ラジオ #53 概要文)
1発録り、と書いてある。台本の無い場所にも出ていく。学校の空気に馴染めなかった人の現在地としては、ずいぶん遠くまで来ている。
Xのアカウントを開いたのは2022年4月、デビューから10か月後だ。いま固定してあるポストは2026年の予定表で、9月から12月まで、コスホリ、オフ会、ラジオ、カラオケと月ごとに埋まっている。撮影の本数とは別に、人の前に出て話す日がこれだけある。
どこにも属さないまま、どこからも呼ばれている。壁を保ったまま入っていける場所が、5年かけて増えた。
その5年の起点に、見てほしい、という一言がある。
見てほしくて始めた
天馬ゆいが最初にカメラの前に立ったのは、2021年6月10日に配信された作品だ。これが875本の1本目にあたる。
そこへ至る話を、天馬ゆいは18歳から順に話している。最初に付き合ったのは、アルバイト先の店長だった。
「18歳のときアルバイト先の店長だったんですけど、相手が28だったかな?10個くらい離れてて、すごい趣味とか合ったり、普通に仲良くなって一緒にゲームしたり、映画観たりとかしてて、相手が結婚してるのは知ってたんですけど、やっぱり一緒にいたいっていうのが勝っちゃって。向こうも奥さんが干渉してこない、ほとんど単身赴任で放置みたいな感じだったので、バレずに結構長い間一緒にいちゃって」
趣味が合って、ゲームをして、映画を観た。冒頭の欄に並んでいた3語が、この関係の中身そのものだった。
条件は1つだけ置いていた。
「でも私だけっていう約束で一緒にいたので、家庭があってもいいけど、私だけが好きって思ってくれるてるならいいよって言ってたんですけど、途中から他のバイトの女の子とかにも手を出してるのがわかって。ロックかけてないの知ってたんで携帯みたら、ラブホでいちゃいちゃしてるLINEとかがあって。「裏切られた!信じてたのに!!」ってなっちゃって、そこから男性不信みたいになって完全に心が壊れちゃって。。」
家庭があってもいい。私だけが好きなら。その1つが崩れた。
「それ見て、「あぁ、もう無理だ!もうダメだ、愛されてないんだ!」って。」
そして、次の一文が出る。
「「なんで私のこと見てくれないの!私のことみてくれないならAVで私のこと見て!」みたいな感じでAVデビューしました。」
見てくれないなら、見て。要求の向きが変わっていない。相手を替えただけで、言っていることは同じだ。急にAVなのかと聞かれて、自分の性質として説明する。
「結構、我慢して我慢して我慢して、爆発したときにとんでもないことしがちで。不倫の店長に浮気されて我慢しまくってて、爆発したのが初めて浮気した次に付き合った人で、その人が浮気したので爆発したのが、今度は浮気じゃなくてAVだったっていう(笑)」
嫌だと言えない人の爆発の仕方が、これだ。言い返す代わりに、自分を別の場所へ投げる。
「あ~、仕返しに近い感じだったかもしれないですね。(略)かわいい女の子が好きな感じで、AVを観たりしてたのも知ってたんですよ。だから「私でヌケよ!」って思って(笑)。仕返しと、もっと私のこと見てっていうのが○すぎて、謎にAVデビューっていう(笑)」
私でヌケよ。仕返しの矛先が、自分を見せることに向いている。
ところが、撮影に入った瞬間に動機のほうが置いていかれた。
「でもAV始めたら、初めての撮影が楽しすぎちゃって、最初はめっちゃビビってたんですけど、「えっ、楽しいかもしれない!」って。もともとお芝居とか演じるのが好きだったし、もちろんHも好きだったので、「楽しいな、撮影!」って。緊張よりも楽しいが勝っちゃって。嘘つけないタイプなので、「実はAV始めた。」って彼に言っちゃったんですよ。「(AV)続けたいから別れよう!」って(笑)」
仕返しのために始めたのに、仕返しの相手に自分から打ち明けて、続けたいから別れると言った。1本目で目的が入れ替わっている。
「初めて自分で恋愛以外の大事なものを見つけたような感覚でした。それまでは恋愛依存で男しか見えないって感じだったんですけど、「仕事っていう生きがいを見つけた!」みたいな」
その1本目には、こういう設定が付いている。
中出しされるのが好きで、プライベートではセックスも中出しも全然足りない!という理由でAVデビュー!そして関東近郊の県から一歩も出なかったのでサブカル好きという事で好きな映画の話などで盛り上がりながら、ついでにサブカルの聖地高円寺デビュー!デビュー作でハメ潮吹くエッチ女子は勝手にゴムを外して中出し強要!
(FANZA 商品紹介文)
題は「自宅大好きでサブカル好きな引きこもり女子が中出しされたくてAVデビュー」。引きこもり、という語が入っている。学校に行けなかった10代の話と重なるが、こちらは企画の設定で、経歴の記述とは出どころが違う。同じ語が別の場所から来て、たまたま並んでいる。
勝手にゴムを外して中出し強要、と書かれた1本の画に、街頭の丸い時計がある。針は10時を少し回っている。手前に冬枯れの木と電柱。ベージュの上着を着た彼女は、手前の木の幹に隠れて口元だけを見せている。白い壁の部屋では、ストライプのシャツとキャメルのスカートで椅子に座り、向かいに黒い服の男性がいる。脇に観葉植物。
夜のアーケードも映る。赤い提灯の下をオレンジのパーカーで歩き、「自転車から降りて下さい」の立て看板の横に「あめんぼ」「尾崎屋」という店名が並ぶ。紹介文にあった高円寺が、この2枚の看板の名前で画面に出てくる。オレンジ一色の背景の前では、赤茶の髪の彼女が両手を顔の横に立てている。白い文字で「TIGER KOSAKAI DIRECTED BY」。
この1本の彼女は、行った先々で誰かと向かい合っている。桜並木を歩いて、白い部屋の椅子に座り、向かいに黒い服の男性がいて、浴槽の中では相手と重なる。動くのは場所のほうで、彼女は着いた場所で毎回正面を向く。
ベージュのタートルネックで、暗い背景の前に顔がある。目を大きく開けて、こちらを見ている。見てほしい、と言って始めた人が、最初の作品でカメラを正面から見ている。
猫足の浴槽の中で仰向けになり、口を大きく開ける。窓とカーテン、金色の蛇口。浴槽の縁では、口を大きく開けて笑っていて、そこでは目が細くなっている。
自宅大好きでサブカル好きな引きこもり女子が中出しされたくてAVデビュー 天馬ゆい
FANZAで詳細を見る私でヌケよ、と思って始めた人が、翌年には他人のものを壊す側に立っている。
他人の彼女を壊す役
ピンクのカーディガンと白いスカートで床に座っている天馬ゆいは、この作品では友人の恋人だ。2022年12月30日の配信で、87本を積んだ2年目の暮れにあたる。題は「親友のカノジョぶっ壊す! 天馬ゆい」で、壊すという動詞の目的語の位置にこの役がある。題の末尾に本人の名前が並ぶ。
配信の3日前に、彼女はインタビューの後編を受けていた。告知に付いた一行はこうだ。
実力派女優さん達の共演作品は、しのぎの削り合い。スキルを求められるけど、それが楽しい!
(XCITY インタビュー後編の告知、2022年12月27日)
しのぎの削り合い、と本人が言っている。専属がいない人にとって、共演は毎回よその上手い人と並ばされることでもある。それを楽しいと言えるようになるまでに、1年半かかった。同じ場で「できればずっと長く続けたいので、10年、20年選手みたいな」とも話している。他人の恋人を壊す役を引き受けた月に、20年続けたいと言っている。
生活感のある部屋の画がある。同じ部屋に男性が2人いる。ローテーブルにノートPC、本棚、ヘッドホン。3人でテーブルを囲み、手前に白い袋が置いてある。見た目には、よくある宅飲みの絵だ。
黒画面が挟まる。白い明朝で「こころの中ではずっと ヤリたいと思っていた」。台所の場面も挟まる。オレンジの服の男性が奥に立ち、手前で別の男性と彼女が向かい合う。別の黒画面には「カノジョの飲み物に 強力な媚薬を混入し」。もう1枚には「ガンギマリ状態にして 超敏感になった全身を」。
黒い画面の文字が、日常の絵を塗り替えていく。書かれているのは全部、男たちの側の計画だ。ずっとヤりたいと思っていた。飲み物に混ぜた。敏感にした。主語はどれも男たちで、彼女は部屋の中にいるだけだ。
同じ部屋の同じ時間が、片方では宅飲みで、片方では仕込みになっている。ピンクのカーディガンを着ている彼女だけが、そのことを知らない。
眼鏡の男性が手前に大きく入り、その奥に彼女の顔がある1枚がある。口が開いている。画面の手前を男性が占めて、彼女は奥で口を開けている。
グレーのベッドカバーでうつ伏せになると、白い下着が脚に絡む。ソファでは脚を広げ、横にオレンジのクッションが転がっている。
同じグレーのベッドカバーに、髪が顔にかかったまま伏せている。床では赤い紐の下着でうつ伏せになる。部屋の別の場所では四つん這いになり、奥に本棚と白い椅子が見える。顔の寄りでは目を閉じていて、手前に男性の腕が伸びている。
この作品の彼女は、いつも誰かの奥にいる。眼鏡の男性の向こうに顔があり、床に座る2人の手前には黒い椅子の背もたれが割り込む。台所では赤い紐の下着で膝をつき、その向こう、扉の先に男性が立っている。加わっていない誰かが同じ空間にいて、彼女はいつもその奥だ。
床では四つん這いになり、ベッドでは腰に手を置かれる。水色の下着だけが画面を占める寄りも入る。身体の部分だけを取り出した画が、間に何度も挟まる。デビュー作にあった街頭の時計や商店街の看板のような、場所を示す画はここにはない。
髪は変わっている。デビュー作の黒いショートボブから、明るい茶髪のミディアムへ。顔の寄りで口を開けて舌を出す1枚に、その色がはっきり出ている。1年半で、同じ人が別の売られ方をしている。デビュー作では監督の名前が画面に大きく出て、桜並木を歩く彼女が主役だった。この1本では、題からして彼女は壊される対象になっている。
上を向いた顔で、口が開いている。別の1枚では足首に黒い拘束具が留められていて、水色の下着だけが脚に残る。
その3日前に、本人は自分を2つに分ける話をしていた。
仕事の「天馬ゆい」と、家の「私」
インタビューの後編で、天馬ゆいはいちばん難しい質問に答えている。仕事でこれだけやっていて、私生活のほうはどうなのか。ここから先は、本人の口から出た言葉だけで進む。
「それ、めちゃくちゃ難しいんですけど。AVはAVの楽しさなんですよ。AVはAVで楽しいし、気持ちいいんですけど、プライベートは別なんですよね。AVでは「天馬ゆい」を楽しんでるんですけど、プライベートの「私」の方は、全く別というか。AVでめちゃめちゃやってるから、プライベートはやんなくてもいいやっていうのがなくて」
天馬ゆい、に鍵括弧が付いている。自分の名前を、自分から切り離して呼んでいる。そして切り離したうえで、片方が足りないと言う。
「私、(AVの)撮影すごいしてて、人より何倍もしてると思うんですけど、私の本心の気持ち的には、「最近やってないなぁ…ヤバい、全然Hしてない!ツラい!」みたいな(笑)」
年に200本前後の現場に立っている人が、足りないと言っている。数が同じ勘定に入っていない。
内容の違いを聞かれて、はっきり答える。
「プライベートの方が地味ですね。Vやってると普通の方が良くなってくるというか。普通でいいよ、ベッドで正常位しよう!とか思いますもん。単純にプライベートは好きな人としたいんで、楽しみ方が違うんですよね」
相手も選ぶ。
「昔よりは純粋じゃなくなっちゃったんですけど(笑)。でもナンパとかワンナイトとか、どうでもいい人とはできないですね。ちょっとくらい私が好意がある人じゃないともちろん無理なんですけど。不特定多数とヤりまくるとかは考えられないです」
相手に好意があるかどうかで、できることが変わる。仕事のほうにはその条件が要らない。
潮吹きについては、本人がこう言っている。
「AVはやっぱ演じたりする楽しさとか、やりがいがあって、ついでに気持ちいいみたいな感覚で。プライベートは相手と分かり合ってお互いを知っていく楽しさなので、AVで求められる体位とか画的なものとか、ここで潮吹き!とか(笑)そういうことに頭を使いたくないんですよね。相手に気持ち入れたり、そういうことに集中したいから普通でいいってなるのかも。カメラの位置とか考えないで没頭したいっていうか(笑)」
ここで潮吹き、と頭を使いたくない。そう言っている人の作品に、潮吹きのタグは139本付いている。875本のうち6本に1本だ。頭を使いたくないと言った当人が、その画をいちばん多く撮っている。
天馬ゆいは、FANZAの欄には潮吹きと書き、事務所の欄には料理と書いている。どちらかが本当でどちらかが嘘、という話ではなかった。潮吹きは天馬ゆいの側にあり、料理は私の側にある。同じ人が、相手を見て書き分けている。
嫌だと言えない人が、5年かけて手に入れた技術がこれだ。断らずに済む方法を、自分を2つに分けることで作った。壁がある、と言ったときのその壁は、現場と自分のあいだにも、天馬ゆいと私のあいだにも立っている。
あなたが画面で見ているのは、そのどちら側なのか。
その分け方が、画の側にも出ている。
確認だけは、相手に渡す
テーブルに脚を上げて座っている天馬ゆいは、この部屋の主に見える。2025年2月の「主導権は年下の彼女」だ。
白いシャツで、奥に鏡と観葉植物が写り込む。缶を口に運ぶときは白いジャージで、そこに青い文字で「ガチでさ…」。白い服で立ち、両手を上げて笑う場面もあって、奥に観葉植物と掲示物が写り込む。この作品の彼女は、家にいる人の動き方をしている。
相手のほうが、招かれた側に見える。屋外の手すりのところに長い茶髪で立ち、室内では白いトップスで笑って、ピンクの文字で「友達の結婚式?」。男性と並ぶ場面では髪を二つ結びにしていて、そこに「AVじゃないですか?」という文字が重なる。前かがみになると「ば~か♥」。
デビュー作でカメラを正面から見ていた人が、4年後にはカメラの向こうへ軽口を投げている。
ただし、主導権を握っている側がひとつだけ相手に渡すものがある。脚と手の寄りに「確認するけどいいの?」と出て、両手を上げて笑う画にも同じ言葉が乗る。仕掛けるのは彼女で、いいのかと聞くのも彼女だ。決めるほうだけを向こうに残している。
ソファで四つん這いになり、別のソファでは仰向けになって「中出しSEX」の文字が乗る。窓辺では立ったまま背中から抱えられる。顔の寄りで舌を出すと、ピンクの帯で「おはようフェラ」。
枕に頭を預けた顔の寄りでは、目を細めてこちらを見ている。手前に指が入り込む。
ベッドの上で口が開く。白いタオルを肩にかけて笑っていて、奥に障子と布団が見えている。そこにピンクの帯で「構って欲しい」。
4年前に見てほしいと言って始めた人が、白いタオルを肩にかけて笑いながら、構って欲しいと言っている。言葉のほうが変わっていない。
旅館の黄色い布団
構って欲しい、と言っていた人が、同じ年の6月には旅館にいる。緑の浴衣を着て、白い器を口に運んでいる。
赤い文字で「日本酒はヤバイよねw」。小文字のwが付いている。旅先で1杯目を飲んだ人の言い方だ。白いレースの羽織を両手で広げて立つと、後ろに障子がある。畳の上では四つん這いになり、「エロ尻」の3文字が重なる。
エロ尻!エロ乳!極上Bodyの美女ゆいちゃんとしっぽりハメまくり!朝から中出ししたけど、連射希望のスケベっぷり。自ら挿入して腰振って。露天風呂で声を気にして、一生懸命声を我慢してます。「お風呂の中で挿れるの初めて。」チャポチャポ響かせながら突くたびに喘ぎ声が漏れて感じちゃう。
(FANZA 商品紹介文)
布団でうつ伏せになって笑っている。前髪がまっすぐ下りている。そこに白い文字で「いつまで寝てんのっ?」。黄色い布団に仰向けになる1枚には「見てるの?」。朝の部屋で、まだ寝ている相手に向かって書かれた文字だ。起こす側に回っている。
和室の彼女は、低いところにいる。仰向けになれば奥に黄色い座布団があり、膝立ちになれば奥に竹の飾りがある。前かがみになる場面に青い文字で「しっぽり」。白いレースの羽織を広げて立つときだけ、目の高さが上がる。
言葉のほうも、彼女が相手に向けて出している。膝立ちで竹の飾りの前にいる1枚には「オナニーしてみてよ」。布団で脚を上げられる場面には「繋がってたい、」。前かがみになる1枚には「イチャイチャ」。命令と願望と、状態の名前。どれも、相手に何かを求めている側の言葉だ。年下の彼女の役で「確認するけどいいの?」と2度聞いていた人が、ここでは聞かずに言っている。
外の場面もある。黒いダウンに白い鞄で男性と並び、奥に海が見える。ガラス張りの通路では、黒いダウンの下に赤いインナーを着て、口を大きく開けて笑っている。頭の上に屋根の骨組みが走っている。旅先の移動のあいだの1枚で、ここには何の文字も乗っていない。
グレーのキャミソールで、両手を胸に当てて笑っている。奥にテレビと窓。和室の設えから離れた、普通の部屋に見える。着替えの前後にあたる時間も、この作品は画に残している。
畳に敷いた布団で四つん這いになると、足の裏がこちらを向く。頭より足のほうが手前にある。腰の寄りには赤い文字で「中出し」、丸い枠に「ずっとエッチしてたい 3本番!」。
「朝から」と「晩まで」が別々の1枚に振り分けられているのも、この作品らしい。朝の文字が乗るのは布団の上の顔の寄りで、目を細めて笑っている。晩の文字が乗るのは和室で前かがみになる1枚で、奥に橙色の灯りがある。同じ日の両端が、2枚の画として置かれている。
面白いのは、この作品が私生活の側の内容に近いことだ。インタビューで彼女は、私生活のほうが地味で、普通でいい、好きな人としたい、と言っていた。旅館で浴衣を着て日本酒を飲み、朝に相手を起こして、夜まで一緒にいる。仕事の側で、私生活の側でやりたいと言ったことをやっている。
題も同じことを言っている。「休日に彼女と。ずっと繋がってたい、朝から晩までSEX旅行」。休日、彼女、旅行。3語とも、恋人がいる人の生活の語彙だ。133分という尺も、旅の1日をなぞるには収まりがいい。63人がこの1本に評価を付けて、ひとりも減点していない。
笑い方も、この作品でいちばん出ている。ガラス張りの通路では口を大きく開けて笑い、黄色い枕の上では歯を見せて笑う。デビュー作の浴槽の縁でも、口を大きく開けて目を細めていた。4年離れた2本に、同じ笑い方が残っている。
木の格子を背にして、黄色い布団に仰向けになる。口が開いている。黄色い枕に頭を預けた1枚では、歯を見せて笑っている。
同じ年の11月に、まったく逆の役をやっている。
芝居の側
玄関に立つ天馬ゆいは、ピンクのブラウスとチェックのスカートに黒いタイツで、髪を二つ結びにしている。黒い服の男性と向かい合っている。2025年11月の作品で、彼女は妹の役だ。
両親を亡くして、兄と2人で暮らしているゆい。両親が死んでから、ゆいは変な仲間たちと夜な夜な新宿で遊ぶ様な娘になってしまった…。兄の歪んだ愛情が悲惨な近親相姦に…!
(FANZA 商品紹介文)
髪も設定に合わせてある。2025年から2026年にかけて、天馬ゆいは茶髪のロングで撮られることが多く、ポニーテールに結う作品もある。ここではそれを二つ結びにして、妹に見える高さまで下ろしている。
廊下では、ピンクのブラウスにチョーカーを付けて歯を見せて笑う。旅館の黄色い枕で見せたのと同じ笑い方が、設定のまったく違う作品に出てくる。台所では黒い服の男性が缶を持ち、目を見開いている。別の1枚では、その缶が彼女の口元へ運ばれる。ピンクのブラウスとチョーカーのままだ。
寝室に移ると、ベッドに横たわる彼女に男性がかがみ、布団に物が散らばっている。顔の寄りで舌を出し、口の端に白い液が残る。ピンクのブラウスが開き、網タイツが見える。洗面台では前かがみになり、髪が顔にかかる。
散らかった布団と、洗面台。どちらも家の中でいちばん生活が出る場所だ。玄関、廊下、台所、洗面所、寝室。この妹が立っているのは、兄と共有している場所ばかりだ。
そしてこの作品の彼女は、受け取る側に固定されている。玄関で向かい合わされ、廊下でも向かい合わされ、台所では缶を口元へ運ばれる。アイマスクを着けられ、首輪を付けられる。自分から取りに行く画がない。
黒画面に「不覚にも何度も中に出してしまい…」と出る。別の黒画面には「パパ活の事実まで発覚して…」。兄が知ることになるのは、中に出したことだけで終わらない。夜の新宿で妹が何をしていたのかを、パパ活という3文字が明かす。身体の話で済むはずだったものが、金の話だったと分かる。
顔の寄りが何枚も入る。舌を出し、口を開ける。口を開けたとき、奥に男性の脚がある。仰向けになって脚を上げられてもいる。妹の役を演じている人の顔を、こんなに近くから撮る作品だ。
ピンクの服に黒いアイマスクで、床にうつ伏せになっている。ピンクの首輪が加わると、口が開く。仰向けになっても首輪のままだ。別の寄りでは、首輪をしたまま目を細めてこちらを見ている。
廊下では水色のレースの下着で、二つ結びのまま男性と向かい合う。洗面所では上を向いて口を開け、窓と鏡が写り込む。花柄の布団でうつ伏せになると、黒いスカートが腰まで上がる。
この妹に着せられているのは、ピンクと黒だ。ピンクのブラウス、ピンクの首輪、ベッドに広がるピンクの布。そこへ黒いタイツと黒いニーソックス、黒いアイマスクが重なる。半年前の旅館では、浴衣も布団も温かい側の色でまとめられていた。6月に日本酒を飲んでいた人が、11月には玄関でチェックのスカートを穿いて兄と向かい合っている。役の指定が変われば、髪型も色も丸ごと入れ替わる。
もともと芝居が好きで始めた、と本人が言っていた。その好きが、いちばん分かりやすい形で使われているのがこの作品だ。兄と妹という設定を、玄関の向かい合いから洗面台の前まで一本で持っている。題は「ナマイキ地雷系妹をOD孕ませ中出し折檻」と続く長いもので、ナマイキ、という言葉が最初に来る。廊下で歯を見せて笑っていた顔は、たしかにそう呼ばれるものだった。
ピンクの首輪をしたまま、目を細めてこちらを見ている顔がある。旅館の布団の上で見せたのと同じ細め方を、この妹の役でもしている。
黒い服の脚に挟まれて仰向けになり、口が開く。黒いアイマスクの下にピンクの首輪が付いた1枚もある。
見てほしくて始めた人が、5年後に何を書いたか。
救う側
2026年9月13日、天馬ゆいはXに3行だけ書いた。画面の向こうで自分を眺めている相手のほうへ、正面から向く言葉になっている。
ワタシはワタシを推してくれるみんなのこと幸せにしてやりたいし気持ちよくしてあげたいし、楽しさで満たしてやりたい 温かい寝床を作るような存在でありたい ワタシを眺めてる間だけは、この世の全ての目を背けたくなるような事から救ってやりたいと思って活動してます
2021年に、私のこと見て、と言って始めた人の言葉だ。5年経って、見ている相手のほうを救いたいと書いている。見られる側から、見せて救う側へ。要求する側から、渡す側に回っている。
温かい寝床を作るような存在でありたい、という一行が、この人らしい。守ってやりたいでも、忘れさせたいでもなく、寝床。人といると消耗した人が、誰かが眠れる場所の話をしている。
眺めてる間だけは、という限定の付け方にも同じものが出ている。ずっと救うとは書いていない。画面を見ているあいだだけ、と範囲を区切ってから、そのあいだのことは全部引き受けると言っている。
3,385のいいねが付き、3.5万人の画面に表示された。
1本目を撮った理由は仕返しだった。いま撮っている理由は、眺めている人を救うことになっている。
オフ会の告知の書き方にも、この人の距離の取り方が出ている。
オフ会の応募始まりました💓 ワタシにではなく、引用先の事務所メアドに連絡してね✨ 天ちゃんといっぱい話したり(隣にも座れるかも♡) お酒飲んだりカラオケしたり…私物プレゼントもあり♡ そんなオフ会だよ😉💕
隣に座れるかも、と書きながら、連絡は事務所へ回す。予定は月ごとに埋まっているのに、窓口は事務所に置いてある。近づける場所を用意したうえで、最後の一段だけは他人に渡す。
その事務所の公式ページに、本人のメッセージが置いてある。
女の子の事を大事にしてるのが普段からも、一緒に仕事をしている中でも伝わってきます。働きやすい事務所です。
(クローネ公式サイト)
働きやすい、という言葉を選んでいる。楽しいでも、優しいでもない。境界が守られている場所を、この人は働きやすいと呼ぶ。
救いたいと書いた人が、いま何を撮っているか。5年目のこの人は、教室にいる。
まだ教わる側にいる
2026年3月に配信された「How to学園」の1本で、天馬ゆいは制服を着て椅子に座っている。
教室が舞台だ。黒板の前にスーツの男性が立ち、その右側に彼女がいる。白い文字で「AV女優でも知らない、ポルチオとは」と出て、彼女の側に「奥…みたいなアレ…?」という言葉が重なる。モノクロの画もある。机と椅子だけの教室に赤い文字で「ポルチオイキを」、白で「知ったら、」。別の画面に「なるんです。」。
黒板の前に立つのは男性で、彼女は生徒の側に座っている。5年目で875本を積んだ人が、知らない役を引き受けている。246分。旅館の1本の倍近い時間を、開発その①から⑤までの段取りに使う作品だ。
この作品の彼女は、ずっと誰かの手の下にいる。手マンの実技講座という帯の下で隣に座られ、腕に拘束具を付けられ、アイマスクで目を塞がれる。教わる、というのはこの作品では、されるままになるという意味だ。
教室という設定であることが、この人の場合は効いてくる。小学校から学校に行けなかった人が、制服で椅子に座り、黒板の前の大人の話を聞く役をやる。しかも「AV女優でも知らない」という前置きが付いていて、彼女は知らない側として画面に置かれる。実際の教室で消耗していたのは、人間関係のほうだった。ここでは座って、分からないと言えばいい。相手を傷つけずに断る方法を、この設定は最初から用意している。
紹介文では、本人のコメントとしてこう置かれている。
天馬ゆい「奥イキは女性にとってセックスの醍醐味ですが、激ピストンは苦しいだけで全然イケない…」
(FANZA 商品紹介文)
緑のソファの場面もある。制服のブラウスとチェックのスカートに白いソックス。ピンクの帯に「開発その①体外から開発?手マン実技講座」と出る。ワイシャツの男性が隣に座り、白い文字で「最初は疑心暗鬼でも…」。同じソファで笑うと、そこに「気持ちイイ…」が重なる。疑いから始めて途中で変わる、という段取りが、文字と表情の両方で進む。
白いベッドに移ると、灰色のシャツの男性が座り、彼女は花柄の服を着ている。膝立ちになると、奥に白い柵とスタンドが見え、「ポルチオに当たってるかも」の文字が出る。仰向けになれば腕に黒い拘束具が付き、「開発その④色々しながら開発!拘束&フェラ」。黒いアイマスクを着けたときは「挿れられなくても感じちゃう身体に」。
白いベッドの別の場面では、体操着を着ている。白い半袖と紺のブルマ。緑の服の男性が手前にいて、「開発その③初心者でもできる!ポルチオSEX」の帯が乗る。制服、花柄、体操着と、衣装が段階ごとに替わる。教わる側の役が、そのたびに着替えさせられている。
脚だけの寄りがあり、茶髪のまま前かがみになり、うつ伏せで背中を見せる。水色の衣装で仰向けになる場面には「天馬ゆい。」の4文字と、赤い文字で「完全新体験」。名前に句点が付いている。制作はBAREMAN、協力にソヒミジャパンの名前が並ぶ。
赤い花の飾りの前で膝立ちになると、「意識できたかも…」と出る。仰向けで脚を上げれば「徐々にポルチオの感覚が…!」。できなかったことができるようになる過程そのものが、章立てにされている。疑心暗鬼と書かれた画があり、意識できたかもと書かれた画がある。同じ人の同じ顔に、違う言葉が乗る。
赤と青の網タイツで前かがみになる。照明が赤い。腰の寄りでは、その網タイツの色が画面いっぱいに入る。
5年目に、まだ教わる側に座れる。そして、知らない、と言えるようになったこと自体が大きい。嫌ですと言えなかった人が、分かりませんとは言えている。相手を傷つけない範囲でなら、この人は正直だ。撮影が楽しすぎた、嘘つけないタイプなので実はAV始めたと彼に言った、とインタビューで話していたのも同じ性質だった。
制服で椅子に座っていた人が、同じ作品の中で水色の衣装に着替えている。
前かがみになると、白い縦書きで「あなたはまだ」とだけ出る。同じ水色で横を向けば、脚に紫の光が当たる。白いシーツの上ではうつ伏せになる。
白いベッドの上で膝立ちになる。奥に窓とスタンド。水色の衣装の顔の寄りには、白い縦書きで「あなたはまだ 本当の中イキを知らない。」と出ている。
How to学園 観たら【絶対】SEXが上手くなる教科書AV 【奥イキ(ポルチオSEX)編】 天馬ゆい
FANZAで詳細を見る残りをどこから開けるか
ここまでの6本は、同じ棚のごく一部だ。隣には、別の顔をした作品が並んでいる。
2022年9月の1本は、題を「いちゃラブ宅飲み濃厚べろちゅう密着せっくちゅ 天馬ゆいが彼女になった日」という。彼女になった日、と言い切る題で、旅館の1本より2年9か月早い。デビューから1年3か月の時点で、恋人役の企画がもう来ている。
2025年1月には、東雲怜弥と2人だけで70分の作品がある。「ARINOMAMA」というシリーズの第4弾だ。
今回出演してくれたのはキュートなお顔とプリケツが特徴の’天ちゃん’こと天馬ゆいちゃん。令和の甘S王子こと東雲怜弥とは現場での共演経験が何度もあり、これまでにはないどこか仲の良い友達のような雰囲気でスタート。
(FANZA 商品紹介文)
何度も共演した相手と、演技も台本も置いて70分向き合う。よその現場に入り続けてきた5年の、副産物にあたる1本だ。
2023年5月には、沙月恵奈・皆月ひかるとの3人企画がある。183分。ガチ聖水50発以上発射、と掲げた1本だ。共演者の側から入りたい向きには、ここが入口になる。
単品で買える動画が875本あるのに対して、月額の見放題の側にも844本が並んでいる。総集編まで含めて横断するなら見放題のほうが早い。逆に、単体作品264本を年ごとに1本ずつ開けていくなら、単品で買うほうが選べる。棚はまだほとんど手つかずで残っている。
こんな人に向いている
- 演技と素の境目を見たい人:芝居が好きで始めた人が、兄に噛みつく妹から年下の彼女まで振れ幅を持っている。歯を見せて笑う同じ顔が、旅館の枕の上と地雷系の廊下の両方に出てくる。どちらが素なのかを考えながら観る作品群になる
- いちゃラブの自然体を探している人:旅館の1本は、本人が私生活の側として語った内容にいちばん近い。緑の浴衣、白い器の日本酒、いつまで寝てんのっ、という起こし方。133分が旅の1日をなぞる形で進む
- 地雷系・病み系のビジュアルに惹かれる人:二つ結び、ピンクのブラウスにチョーカー、黒いアイマスク、ピンクの首輪。2025年11月の1本に揃っていて、玄関から洗面台まで家の中だけで完結する
- 総集編を避けて単体を選びたい人:4時間の詰め合わせを飛ばして1本を通して観たい向きは、単体作品のほうから開ける。同じ人が主役を張っている作品だけを追うと、年ごとの変化が見える
分けたままで、5年続いている
この人は、自分を2つに分けることで仕事を続けられるようになった。
嫌だと言えなくて学校を消した10代が、断らずに済む場所を見つけて、そこで5年立っている。趣味の欄が2か所で違うのは、相手を見て書き分けられるようになったからだ。書き分けられる人だから、同じ年に旅館の恋人も、兄に噛みつく妹も、教室で知らないと言う生徒もやれる。
年末までのイベントは埋まっていて、配信の予定も10月まで入っている。10年、20年選手みたいに、と言っていた見通しの、これが5年目だ。次の5年でこの人が何を書いているかは、まだ分からない。
無料で流れている動画はある。それでも、寝床を作るような存在でありたいと書いた人を追いかけたいなら、FANZAで1本買うところから始めてほしい。今日その1本を開けるかどうかが、この人が10年選手になれるかどうかの一部を決めている。
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